脱炭素化と同時に、今後は「いかにエネルギーを使わずに、これまでと同じようなライフスタイルを維持するか」といったアプローチも重要ですよね。御社の放射冷却の技術は、事業化できるのではないでしょうか。
放射冷却技術を活用した素材を取り扱う「SPACECOOL(スペースクール)」のことですね(編集部注:SPACECOOLは大阪ガスとWiLが共同出資している)。家もビルも、熱が一番逃げるのは窓ですが、今はどのハウスメーカーさんも断熱に力を入れています。そのため、我々のエネルギーが使われる量も顕著に減ってきています。
断熱のおかげで、世の中のエネルギー使用量が減ったのですから我々は手ばなしで喜べる話ではありません。しかし、エネルギーを資源と捉えると、やはり省資源化はこれからどんどんと進めていく必要があります。そのための解決手段の1つとしてSPACECOOLには期待しています。
今、取り組んでいるのが燃料電池という分散型電源です。我々は、これが究極のシステムだと思っています。というのも、燃料電池は、1次エネルギーのガスを運んでくるので、家庭のすぐ近くで電気と熱の両方を効率よくつくることができるんですね。
今はまだ、この燃料電池は通常の給湯器に比べて広い設置場所が必要ですので、スペースにゆとりのあるマンションや一戸建てなどを中心に採用されていますが、今後もっと一般に普及するように、壁掛け型の燃料電池の開発を進めています。
この燃料電池を核に太陽光や蓄電池を組み合わせることによって、家で使うエネルギーを限りなくゼロにできるのではないかと考えています。ゼロにできるどころか、各家庭で電気を売ることもできるかもしれない。既に燃料電池は15万台以上売れていて、社会的需要が高いと手応えを感じています。
エネルギー会社でありながら、「エネルギーを消費しなくてもよい生活」を支えようとしているわけですね。
そうした生活を支えるもう一つのキーワードは「レジリエンス(回復力)」だと思っています。近年、大規模な地震や洪水、河川氾濫が繰り返し起こるようになりましたよね。その場合、どうしてもインフラは打撃を受けます。しかし、大雨や洪水などによる停電時においても、燃料電池は強いんですね。
2018年6月に大阪の高槻市周辺を震度6弱の地震が襲った「大阪府北部地震」の際、当社も一部エリアのガス供給を停止しましたが、2018年には地震や台風で相当な範囲で停電も起こりました。
こうした停電の際、普通であれば、オール電化の住宅はほぼ全ての活動ができなくなってしまいます。しかし、ガスが供給できていて燃料電池を導入していた家庭の9割では、ほとんど普通の暮らしができたと報告を受けました。
もちろん、燃料電池で発電できる電力量には上限があるため、ヘアドライヤーを使うような急激な電力負荷には耐えられませんが、携帯の充電やテレビ、お風呂、扇風機なども使えたそうです。こういったレジリエンスは、自然災害が増えている昨今、世界的にも重要になってくると感じています。
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