再生可能エネルギーの調達も進めていると聞きました。
これまでは「自社で電源をつくらないとダメだ」という考え方だったのですが、再生可能エネルギーをつくっている会社から調達することも、同等の効果があると考えるようになりました。
2023年には調達も含めて国内外の再生可能エネルギー電源を250万キロワット(kW)、2030年には500万kWにすることを目指して、再生可能エネルギーを増やしています。北米では太陽光発電開発をしている企業4社と既に協業しており、北米における再生可能エネルギーの開発事業者としても立ち位置を上げていきたいと考えています。
技術的に相当なブレークスルーは必要になるでしょう。しかし、2050年には当社事業のカーボンニュートラル化に着地できるのではないかと思っています。
今、技術的なブレークスルーという言葉がありました。太陽光のような従来のエネルギー技術に投資するだけではなく、今後まったく新しい技術に投資される予定はありますか?
1つは先ほどお話ししたメタネーションの分野ですね。2021年1月 、大阪ガスは「SOEC(固体酸化物型水電解)メタネーション」の鍵を握る、水蒸気とCO2を高温で同時に電気分解して水素とCO(一酸化炭素)を得る装置の試作に成功しました。
従来のメタネーション(エネルギー変換効率:約55~60%)や水電解による水素製造(同:約70~80%)に比べ、約85~90%と高いエネルギー変換効率が期待されています。今後は、他社と組んでスケールアップしていきたいと考えています。このような分野でのスタートアップとの連携が実現することを期待しています。
変わり種でいうと、アンモニアでしょうか。アンモニアは、空気中の窒素とメタンあるいは石炭由来の水素からできています。
これまでアンモニアは、非常に高温高圧でしか製造ができませんでした。そのため、CO2を減らすために燃料としてアンモニアを使おうとする一方で、製造時に大量のエネルギーを使うことでCO2を逆に排出してしまうという矛盾を抱えていました。しかし、低温低圧で製造する技術に挑戦しているスタートアップも生まれてきており、こうした企業に投資もしています。
個人的に期待しているのは、量子コンピューティングです。量子コンピューターが実装化されれば、シミュレーション精度が格段に上がり、複雑で未知だとされる領域も解明されてくるかもしれない。驚かれるかもしれませんが、例えば内部で複雑な反応が一気に発生する内燃機関は、まだ原理が分かっていないのです。表面科学と言われる触媒技術も実態は解明できていません。
今のシミュレーション技術では、スーパーコンピューター「富岳」を使っても解析できません。量子コンピューターが本当に実装化されてくれば、材料開発とまったく違う観点でブレークスルーが起こるのではないかと期待しています。
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