前回は、日本の大企業はもっと国内のスタートアップを買収し、事業の新陳代謝を進めるべきだと訴えました。実はM&A(合併・買収)の副産物として、人材の獲得も大きなポイントです。連載もだいぶ息切れしてきましたが、とても大事なポイントなので、今回はそれについて書いてしまおうと思います。

ディー・エヌ・エー(DeNA)会長の南場智子氏(写真=的野弘路)
ディー・エヌ・エー(DeNA)会長の南場智子氏(写真=的野弘路)

 残念なことに、日本の大企業はM&A(合併・買収)で獲得した人材の活用が著しく苦手です。人事制度がガチガチなんだと思います。上司のいない環境で人集めから資金の手当て、タフな交渉、ものづくりからマーケティングまで全て泥まみれになりながら駆けずり回って必死に事業を作り上げた起業家とそのチームを、なぜ企業トランスフォーメーションのchange agentとして活用しないのか。

 当社のある事業を他の大企業に売却した際、その事業を率いてきた大変に優秀なメンバー達を、当然そのままお渡しすることになりました。別れは寂しいけど、売却先の大企業の幹部にいずれなるだろうな、公表されたらその会社の株は「買い」だね、と思っていたのですが、売却前に、子会社から親会社への転籍は100%あり得ないときっぱり宣言され、残念に思ったことがあります。日本ではどうも普通のことらしいです。

 人材獲得を「副産物」と書きましたが、実はそれを「主目的」としたM&A、つまりアクハイヤーがスタートアップ先進国で盛んです。前回、米国のスタートアップのイグジットは9割がM&Aであることを紹介しましたが、そのうちかなりがアクハイヤーだといわれています。これが優秀人材の循環を速める潤滑油として、エコシステムにとって極めて重要な役割を果たしています。

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