起業家の数は、まだまだ足りないけれども10年前と比べれば相当増えています。しかしそれに比例して世界で大勝負をするスタートアップが増えているかというと、まだ物足りない状況です。お前はどうなんだ、と言われそうですが、ここは自分を棚に上げて、というか、反省を込めて論じます(時間がかかっていますが、もちろんDeNAもまだまだ挑戦真っただ中です!)。

ディー・エヌ・エー(DeNA)会長の南場智子氏(写真=的野弘路)
ディー・エヌ・エー(DeNA)会長の南場智子氏(写真=的野弘路)

 一つの大きな問題は、早すぎ、小さすぎる上場です。

 まずは国内で一定の成長や利益も達成して上場を果たし、そのあと海外市場に挑戦しようと考える起業家が多いのですが、一旦上場してしまうと、しっかり利益を増やして株価を上げていくというプレッシャーにさらされ、うまくいくかどうかわからない海外展開は先延ばしにされるか、中途半端な投資を実施して失敗してしまう。国内vs世界市場を例として論じましたが、必ずしも対象市場の地理的拡大の話ではなく、数百億の企業価値を目指す試合をするか、兆円規模を狙う試合をするかの話です。ちなみに上場後の低成長も日本の大きな問題ですが、それはまた今度気が向いたら別稿で書くとして、今はスタートアップの話にフォーカスします。

 なぜ日本のスタートアップは最初からみな小さい上場に向かって行くのか。より深い「死の谷」のレイターステージ(上場手前の段階)を支える大規模なVC(ベンチャーキャピタル)が未発達であることは一つの要因です。欧米でも中国・アジアにおいても、未上場企業が数千億から兆円規模の資金を調達する例が多くなってきています。日本は上場までに300億円を調達した企業がまれに出現しますが、それが最大レベルです。世界的な資金余りを受けて、少しずつ風景が変わりつつありますが、他の先進国と比べて遅れています。

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 もう一つ大きな要因となっているのは、VCがスタートアップに対してなるべく早く上場するよういざなっている実態です。無言のプレッシャーなどではなく、しっかり投資契約書に「なる早上場努力義務」が書かれていることが多いです。上場できるのにしない場合は、VCから株を買い取ってね(投資したお金を返してね)、法人として株を買い取れなければ起業家個人が買い取ってね、とまで書かれていることも珍しくありません。こうして起業家は、なるべく早く上場するマインドセットで走り出し、少しうまくいったら小さい上場を果たします。

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この記事はシリーズ「DeNA南場智子の「未来の輪郭」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。