ちなみに新卒をバッチで大量に採用する一括採用制度を維持しているのは先進国の中では日本だけだと聞いています。韓国も10年前に年齢による差別という理由で撤廃したとのこと。大企業が「〇〇年3月卒業予定の方」と呼び込む採用を撤廃して、いつでも本流のキャリアパスに乗れますよ、と実態を変えれば、起業に挑戦する若者は格段に増えます。人材に死ぬほどハングリーなスタートアップが社会経験を広げたいと思っている若者たちを放っておくはずはないからです。

 経営の一番大事なアセットは人材であり、その採用方法について外部からとやかく言われたくない気持ちは経営者としてよくわかります。が、ここは日本のために、新卒を主たる人材獲得の対象として考える現状の採用をどうか変えてほしいと思います。多様なバックグラウンドを持つ中途採用の人材がメインストリームで、第二新卒含め新卒もたまにいる、くらいに振り切るのはどうでしょうか。

日本の大企業は人材がよどんでいる

 経団連の経営者の皆さんに、経営会議メンバーにおける中途採用者の割合を尋ねて回ると、全員がプロパー、すなわち新卒で入った人たちというケースがとても多い。入社してから30年以上ずっと同じ会社しか見ていない人たちが集まって改革だ、イノベーションだって議論しているわけですが、さすがに無理があるように感じてしまいます。

 人材のよどみが日本の大企業を弱くしている最大の要因だと感じます。組織も生き物と同じく動的平衡が必要です。生物学者の福岡伸一先生とお話しするたびに感動するのですが、たくましくみずみずしい生き物に必要なことは驚くほどそのまま組織にも当てはまります。分子レベルでは絶えず壊れ、率先して入れ替わりを促進し微妙なバランスを維持することで、病気を治し、ウイルスと戦い、進化の機会を得て変化に適応していくわけです。新卒一括採用をやめ、新卒を主たる幹部候補社員とするのを「日本のために」やめてください、と書きましたが、必ずやその企業のためにもなると思います。

 今日は採用の話をしましたが、他にも人材に関して大企業に変わってほしいことについて、次回に続きを書こうと思います。

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