沈みゆくタイタニックで特等席を争うな

 こうして大企業に飲み込まれ、その会社独特の仕事の進め方を身につけていきます。何かに気づいても会社を離れる勇気が出ず、組織内での昇進争いに精を出す人も多いでしょう。前回書いた日本の大企業の凋落を考えると、こういった個人の行動パターンは沈みゆくタイタニックで特等席を争っているように思えます。

 日本の教育は「間違えない達人」の量産システムであり、幼児期から誰かが決めた答えを言い当てる教育を受けます。決められたレールの上を上手に速く走る訓練です。進路などの大きな選択も、世間一般に重視される指標である偏差値をもとに決めていきます。そういった環境で成功してきた優秀層にとって、レールから外れるのはとても怖い。まして一度外れると二度と戻れない可能性が高いならなおさらです。

「寄り道プレミアム」をつけよう

 教育の問題は大きく、その改革も提唱したいが、それを待っていると10倍速では変われません。間違えたくない若者たちも安心してレールから外れられるよう、いつでもレールに戻れる環境を意識的につくることが有効です。新卒一括採用を通年採用にすればそれでよいのではなく、大学から大企業や官庁というレールのつながりを一旦切り離し、卒業から3カ月後でも、1年後でも3年後でも10年後でも、中途で入った人材が等しく社内のメインストリームで活躍するチャンスがある、という社会を大企業の協力を得てつくっていく。寄り道歓迎、むしろ寄り道プレミアムをつけてもよいと思います。

 学生たちは、卒業と同時に友達と起業する、あるいは先輩のスタートアップに参加してみる、あるいは日本の教育でほとんど醸成されない職業観を得るために大小様々な企業でインターンをしてもよいでしょう。世界を放浪してもいい。せっかく好奇心と吸収力が極めて高くリスクも取れる年代です。一度レールからすっかり解放されて経験を広げ、自分の限界にも挑戦してみる。そのあとやっぱり大企業に入りたいなら、ビジョンに共感できるところを探してドアをノックし、普通に入社試験や面接を受けられる。どのタイミングで入社しても等しく実績次第で幹部を目指せる。そういった社会にしていくべきだと考えます。

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