日本企業はとことん競争し、勝つべし

 このような状況の中で、今や企業としての成長や利益だけでなく「社会性」こそ重要だという発言をよく聞きますが、利益や成長と社会性を対立概念のように誤解されやすい言い方をするのは危険です。短期的な成長や一時的な利益は分かりませんが、社会性のない会社が中長期的に利益を出し成長することなどできないわけです。社会や顧客の圧倒的な支持を得るために、とことん競争し、日本の企業はもっと勝たなければなりません。

 過去20年を振り返って、皆さんが一番感謝している企業はどこの会社ですか? 私はそう聞かれたらやはりスマートフォンやPCを見つめてしまいます。米グーグルやアマゾン・ドット・コムなどのGAFAMは情報の取り方、仕事の仕方、人とのつながり方、商品の売り方、買い方、コンテンツの生産や消費の仕方を根本から変えました。もちろん弊害も議論されていますが、個人的には多大な恩恵を得ています。

 コロナ禍で「YouTube」や「Instagram」「Zoom」にどれだけ助けられたか。インターネット禁止と外出禁止のどっちを取るかと聞かれたら、私はインターネット禁止の方が耐えられないかもしれません。インターネットやスマートフォンはスペイン風邪の時代にはなかった新しい社会の常識的インフラです。そしてその常識的インフラの担い手は皆、ベンチャーキャピタル(VC)によって支援され巨大な企業となり世界経済をけん引しました。今は次の新しい常識の担い手が企業価値ランキングの上位に食い込みつつあります。事実、世界の企業価値トップ10の半分以上が1990年以降に誕生した企業です。一方日本のトップ10を見ると、持ち株会社としての設立で社歴が浅いものがあるにしろ、設立30年以内の企業は実質ゼロです。歴史ある企業がずらりと並び、新たに誕生した企業が上位に食い込んではいません。

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 先ほど日本企業の世界経済における位置付けの凋落について語りましたが、日本企業は同じ会社と競争して負けたのではなく、新しいプレーヤーに負けているのです。他国の伝統的な企業と同様に、です。ただ、世界では新しい主役が現れ、けん引している。その人たちほど世界中の人々のライフスタイルに影響を与え、喜びを届ける企業が日本から出ていないことを、やはり経済界は、私も含めちゃんと反省するべきです。

 いつの時代もイノベーションの担い手は既得権益から距離のあるハングリーで新しい企業たちです。日本経済の活力を取り戻すためには、次代の担い手、成長のけん引役が次から次へと生まれてくるような土壌、エコシステムをしっかりつくっていかなければならない。そして大企業もそのエコシステムに貢献し、またそこから成長の活力を得る。そのためにはどこをどう変えていくべきか、次回以降テーマを分けて考えていきたいと思います。

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