社内と社外を柔軟に行き来できる副業の利点を、組織開発にうまく取り込もうとしているのが、三井住友海上火災保険とダイハツ工業だろう。三井住友海上は、課長昇進に出向・副業経験を前提にする方針を打ち出すほか、キャリアアップ目的などで同社を退職した人材の再取り込みでも副業を活用する。一方ダイハツは、地域貢献やシニア活用に副業制度を組み込むことで、従業員の活躍の場を増やそうとしている。
副業経験を管理職登用の条件に
自社に籍を置きながら社外の知見を吸収できる副業の利点を、組織全体の成長に生かそうとしている企業がある。損保大手の三井住友海上火災保険だ。2022年1月、同社は副業・兼業または出向などの外部経験を、管理職登用時の条件とする方針を打ち出した。現在、30年度からの本格導入に向けて準備を進めているところだ。
同社に約3900人いる部課長クラスの管理職全体に占める、副業・兼業または出向経験者の割合は現在23%。これを25年までに30%にする目標も掲げている。
三井住友海上が副業をはじめとする外部経験の重要性に目を向けたきっかけは「変化に対応できる強い組織」の構築だった。少子高齢化の加速や若者のクルマ離れなどで、損保業界がこれまで主力としてきた自動車保険の先行きは厳しい。火災保険も、近年の自然災害の多発で収支改善の兆しが見えない状態になっている。
新たな収益源の確保を急ぐべく、さまざまな取り組みを加速させているが、その原動力として期待するのが「社外カルチャーの取り込み」だ。「新卒採用だけでは、多様な考えを持った人材を取り入れるのは限界。中途採用や外部連携などを通じて、さまざまな経験やスキルを持った人材も取り入れなければならないと考えた」と同社人事部・人事チームの越智貴之部長は話す。
折しも、21年6月には東京証券取引所がコーポレートガバナンスコード(企業統治指針、CG)を改訂した。同改訂では「企業の中核人財における多様性の確保」と称して、管理職における多様性の確保についての考え方と測定可能な自主目標の設定を求めている。女性や外国人、中途採用者など、さまざまなバックグラウンドを持つ人材をどれだけ戦力として生かしているのかを、対外的に開示しなければならなくなった。加えて、多様性の確保に向けた人材育成方針のあり方についても公表を求めている。こうした流れも三井住友海上の動きを後押しした。
「組織内でも意思決定の権限を持つ管理職層にこそ、多様な視点を真っ先に取り入れてもらわなければならない。その手段として、副業・兼業は合致するのではないかということになった」と、越智氏は導入の背景をこう話す。
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