富士通に「新卒入社2年目の“課長”」が誕生し、躍動している。同社は2020年4月から、社内で必要なポストを公表して募集し、年次にかかわらず社員が自分で手を挙げられる「ポスティング制度」をグループ全体へ拡大させてきた。社内の空きポジションを専用のウェブページに掲載し、希望者が応募する。制度の開始当初は管理職1万5000人を対象にジョブディスクリプション(職務記述書)を基に募集し、22年4月にはグループ全体に拡大するなど、人材登用の改革を進めてきた。その成果の1つが冒頭の若手“課長”の誕生だ。

富士通入社2年目の横田奈々さんは2022年9月、課長に匹敵するポストに応募して選ばれ、就任した。横田さんは1年間の任期に、部署のプロジェクトを先導して経験を積む。昇進の道を明確に描いているからこその挑戦かと思いきや、彼女は「長期的なキャリアプランは描いていない。目の前のことに取り組んでいく」と話す。意欲的な若手人材をひきつける土壌づくりのカギとは何か。

2021年に富士通へ入社した横田奈々さん。顧客のUX(ユーザー体験)のデザインなどを手掛ける富士通デザインセンターで、課長と同等のポストである「デザインアドボケート」として働く。学生時代からDJの顔も持つ(写真:鈴木愛子)
2021年に富士通へ入社した横田奈々さん。顧客のUX(ユーザー体験)のデザインなどを手掛ける富士通デザインセンターで、課長と同等のポストである「デザインアドボケート」として働く。学生時代からDJの顔も持つ(写真:鈴木愛子)

課長に相当するポストに就いたそうですね。どのような業務なのか教えてください。

横田奈々さん(以下、横田さん):デザイナーとして、組織について発信したり、ユーザーの目線に立って課題を解決する方法を考えたりする役割を担っています。「課長」級のポストといっても、部下を指導する管理職というわけではありません。ただ、部内で進めているプロジェクトを中心となって進めています。

 今の仕事には、学生時代の経験が生きています。大学では、消費者のニーズを分析して商品のコンセプトに落とし込んだり、ウェブ画面をデザインしたりする勉強をしてきました。SNS(交流サイト)や動画の作成など、デジタルツールに強いこともZ世代ならではの強みだと思っています。

「課長級」のポストには、年次が高い人の応募もあったのではないかと思います。手を挙げることにハードルは感じましたか。

横田さん:今、社内の異動は基本的に、ジョブディスクリプションが提示され、社員が自由に応募できるポスティング制度のもとで行われています。様々なポストに挑戦している人がたくさんいたので、特にハードルは感じませんでした。

 そしてこのポストは、自分が感じていた課題に挑戦できる役割だと思ったので、ここで手を挙げないと後悔するなと思いました。

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