有給は20日きちんと取りなさい
会社の働き方改革は地方でも健在だった。とりわけ製造現場の社員がしっかり休みを取れるように人材配置を見直すなど、職場環境の改善はとても進んでいるように感じた。「地方拠点でも『有給は20日ちゃんと取りなさい』とのルールが徹底されていました。これだけの大組織で改革を徹底するのはそう簡単ではありません。そこは評価したいところです」
東京勤務より空いている時間が増えたからだろうか。そのうち仕事に対する意欲が衰えるだけでなく、不安を覚えるようになった。「今この瞬間、会社が倒産して放り出されたら、私何ができるだろう、って。自分には社外で通用する力がどれだけあるのか心配になりました。自分のキャリアがどれだけ通用するか知りたくて、転職サイトに登録することにしました」最初は自分の人事業務の知識がどれだけ役に立つか、興味本位での登録だったが、次第に転職活動に本腰を入れるようになり、昨年大手コンサルティングファームに転職した。スタートアップ、ベンチャーを大企業や自治体とマッチングさせる起業支援が主な仕事だ。
「給料は1割減りましたし、リサーチや資料づくりのために8時過ぎくらいまでに残業するのもザラです。土日も仕事が入る時があります。でも私はとても満足です。毎日、新しいことをしている実感がありますから」
最近、前職で社内公募制度が導入されたと元同僚から聞いた。どこでどのように働きたいか、社員の意向をきちんと聞く制度を取り入れたという。「見渡せば人事部の若手は半分くらい転職していました。会社主導のキャリアに対し、不満を持つ人は私だけではなかったみたい。会社もようやく重い腰を上げたみたいですね」
長時間労働を抑制したり、休暇取得をしやすくしたりする働き方改革は、子育てや介護などのライフイベントが増えてくる30~50代社員の労働参加や働きやすさを追求するという意味でとても重要な施策だ。しかし「仕事をこなしながら成長するのが重要であるという20代社員にとって、大事なポイントをそぎ落してしまったのも事実」こう語るのは、人材紹介会社「エン・エージェント」統括マネジャーの藤村諭史氏だ。
藤村氏が転職希望者の話を聞いていると、前出の京子さんのようなケースに遭遇するのだという。「コロナ禍を機に、時代の変化がより激しくなっていることを感じる人が増えた。自分が若いうちから“どこでも通用できる人材”にならなければと思う若者も一部出てきている」(藤村氏)それだけに「成長実感を感じられない」と大企業を飛び出すケースが目立ってきているのだという。
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