社長と新人の「LINE感覚」の意見交換、会長との“オンライン飲み会”――。住友化学やNECが、経営幹部と若手とのコミュニケーションに工夫を凝らしている。Z世代の感覚に合ったツールを使い、社内の立場を超えて互いの距離を縮める。Z世代育成の大きな一歩を踏み出した。

■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
(1)働くZ世代のトリセツ “金の卵”を理解する5つのキーワード
(2)社長とLINE感覚で意見交換 住友化学のZ世代に響く新人研修(今回)
(3)さらばOJT、NTTデータはチーム研修でZ世代の柔軟さを生かす
(4)働くZ世代のオンライン座談会 「本当は上司に理解されたい」
(5)「自然体で自分のことを話せる職場づくりを」 識者に聞く

 「返信をもらえてうれしい。心の距離が縮まったと思う」──。

 住友化学の千葉工場(千葉県市原市)でエンジニアとして働く入社1年目の佐野公一郎さんは、感慨深げにチャットアプリ「Teams(チームズ)」の画面を眺める。メッセージの送り主は、同社の岩田圭一社長と荻野耕一常務執行役員。佐野さんは新人向けの推薦図書リストから世界情勢に関する本を選んで読み、その感想をチャットで送った。すると経営幹部からも、書籍に関連した話題や「今後の鍛錬を期待しています」などと激励の返信が届いた。

社長と新人をつなぐ「LINE感覚」

 推薦図書の感想を経営幹部に伝える取り組みは2020年4月、新型コロナウイルス禍で開催できなくなった対面での集合研修に代わるコミュニケーションとして始めた。岩田社長らは業務の合間を縫って新入社員一人ひとりの感想に目を通す。

本の感想をチャットに書き込む入社1年目の佐野公一郎さん(写真:柴 仁人)
本の感想をチャットに書き込む入社1年目の佐野公一郎さん(写真:柴 仁人)

 「経営幹部にとっても、若いセンスに触れられて刺激になっている」と同社執行役員人事部長の清水正生氏は話す。これまでも新入社員に会社の推薦図書を読んでもらっていたが、感想を経営幹部と共有することまではしていなかった。佐野さんは「経営幹部に直接会うと緊張して思い通りに話せないかもしれないが、チャットなら緊張しすぎることなく感想を伝えられる」という。

 物心ついた頃からSNS(交流サイト)に慣れ親しむZ世代にとって、複数のコミュニケーションツールを使い分けることは当たり前。佐野さんは、「チームズは会社生活におけるLINE(ライン)のような感覚」と話す。プライベートでよく使うSNSの「Instagram(インスタグラム)」に比べて連絡用の意味合いが強いが、メールほど形式ばってはいない。経営幹部に対して感想をフランクに伝えるにはうってつけのツールだったようだ。Z世代の感覚にフィットしたツールを採用したことが、彼らとの距離感を縮めるのに一役買った。

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