幼い頃からスマホやSNS(交流サイト)を使いこなすソーシャルネーティブのZ世代が、ここ数年で続々と社会人デビューしている。採用難の中で入社してくれた“金の卵”だが、「指示された以上の仕事はしない」「定時に帰る」と不満を口にする上司や先輩社員も少なくない。本当にそうだろうか? 彼らの仕事観を理解して歩み寄ると、意外と早く戦力になるかもしれない。

■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
(1)働くZ世代のトリセツ “金の卵”を理解する5つのキーワード(今回)
(2)社長とLINE感覚で意見交換 住友化学のZ世代に響く新人研修
(3)さらばOJT、NTTデータはチーム研修でZ世代の柔軟さを生かす
(4)働くZ世代のオンライン座談会 「本当は上司に理解されたい」
(5)「自然体で自分のことを話せる職場作りを」 識者に聞く

 「Z世代って本当に何を考えているか分からない」──。IT企業でプロジェクトマネジャーを務める30代女性は、4月から部下に加わった新入社員の指導法に悩む。この部下は真面目で、指示した仕事は丁寧にこなすが、それ以上のことを自分からやろうとしない。それを指摘すると「教わっていない」と口答えされたという。「何事にもチャレンジする姿勢がないと一人前にはなれないのに」と女性は憤る。

 彼女には、昨年入社した新入社員に突然辞められた「トラウマ」もある。彼女自身が寝る間も惜しんで仕事をした経験から、この部下にもよかれと思って積極的に仕事を任せていた。だが、「周囲への相談もなく、ある日チャットで退職を知らされた」。

 今、こうした入社4年前後までのZ世代と呼ばれる若手の育成に手を焼く職場が増えている。30代以上の上司や先輩社員とは価値観が明らかに異なるが、採用難の中で入社してくれた“金の卵”なので簡単に辞めてもらっても困る。コミュニケーションを必要以上に避け、腫れ物に触るように接する人は多い。

日本人の14%の金の卵

 Z世代とは一般的に1996年以降に生まれ、現在20代半ばまでの若者を指す。米国のマーケティング用語が発祥で、世界共通の世代を表す言葉として広まった。世界人口の3分の1を占めるとされ、今後の労働や消費活動の中核を担う世代だ。少子化が進む日本では全世代の約14%に当たり、貴重な働き手として多くの企業が熱視線を送る。

Z世代はスマホやSNSに慣れ親しみ、ソーシャルネーティブと呼ばれる(写真:アフロ)
Z世代はスマホやSNSに慣れ親しみ、ソーシャルネーティブと呼ばれる(写真:アフロ)

 過去を振り返ると、バブル世代や就職氷河期世代、ミレニアル世代など生まれ育った時代背景を反映した新世代が5~15年周期で登場してきた。Z世代の最大の特徴は、幼少期からスマホやSNS(交流サイト)に慣れ親しんだ「ソーシャルネーティブ」である点だ。ネット上を駆け巡る膨大な情報の中で育ち、自分らしさへのこだわりと、他人から認められたい承認欲求がある。

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 過去の世代がそうだったように時間がたてば学生気分が抜け、自然と上の世代と理解し合えるようになるかもしれない。だが、Z世代の多くは新型コロナウイルス禍が起きた後に入社し、この前後で企業の働き方が大きく変わったことが過去の世代と異なる。就職活動も新人研修もオンライン化し、入社後はもっぱらテレワーク。働き方が変わった以上、育て方も変えざるを得ない。

 人材育成に詳しい日本能率協会マネジメントセンター(東京・中央)の斎木輝之氏は「テレワークの普及で、社内コミュニケーションの難度が上がった。創意工夫して指導力を磨いた上司と、そうでない上司の二極化が進んでいる」と話す。Z世代の仕事観を理解しようと歩み寄る姿勢なしに、戦力にすることは難しい。

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