人生100年時代と言われるが、この言葉を前にして、あまりの時間軸の長さに戸惑いを覚えるビジネスパーソンも多いのではないだろうか。食材や厨房機器、食器などを「B to B(企業向け)」で取引する業務用卸サイトを展開するMマートの村橋孝嶺社長が、起業したのは64歳のころ。81歳で東京証券取引所マザーズ市場(現東証グロース市場)上場を果たし、86歳となった今も出社して、経営の指揮を執る。60歳を過ぎてなお、当時、黎明(れいめい)期だったインターネットに強い関心を抱いて、起業を果たした。人生100年時代をいち早く先取りした村橋社長に話を聞いた。

村橋孝嶺(むらはし こうれい)氏
村橋孝嶺(むらはし こうれい)氏
1936年東京都生まれ。20歳で居酒屋を開いたのを皮切りに、パブ、レストラン、クラブ、カラオケ、お好み焼き店などを幅広く経営。2000年にMマートを創業。18年にMマートを東京証券取引所マザーズ市場(現、東京グロース市場)に新規上場。健康維持のため、毎日の体操やストレッチを欠かさない。(写真:竹井俊晴)

起業のきっかけは何でしたか。

村橋孝嶺・Mマート社長(以下、村橋氏):創業したのが1999年末です。私もいろいろな商売をしてきましたけれども、中でも常にやってきたのが飲食店で、私の本業みたいなものなんです。当時は新宿でいくつかの店をやっていましたが、現在のままの流通で果たして続けていけるのかと思ったのが原点ですね。

仕入れに限界を感じていたと。

村橋氏:といいますのが、配達に来る男の子しか、売り手との接点がないわけですよ。そうすると持ってきたものについては知っているけれども、ほかにはどんな商品があるのと聞いたって分からないわけですよ。ほかにどんなものがあるか教えてよと言ったら、チラシみたいなものを持ってきたりするんですけれども、まったく要領を得ない。

 物流の上から流れてきたものを使って、飲食店がメニューを作らなければしょうがないというのがそれまでの飲食業界の在り方だったんですね。自ら食材を探し求めて、新しいメニューを考案するなんていうのは、システム的に難しい状況だった。お米にも混ぜ物をされたりといったこともありました。まったく今のこの流通で果たして今後日本の飲食業界、流通業界はやっていけるのかなという疑問がものすごくあった。

そして、食材や厨房機器、食器などの流通の改善にネットを活用することを思いつくわけですね。

村橋氏:私は本が好きで、ずっと読んでいるものですから、これからはネットの時代が来ると、すべてがネットに置き換わっていくというのは、知識としては持っていたわけですね。でも、パソコンも見たことはないし、ネットももちろん見たことはない。そこで息子を呼んで、「お前、パソコンを持っているか」と聞いたら、「ノートパソコンがあります」ということで、すぐにネットを見せろと言ったら、つながないと見られませんよと言われた。当時は何も知らないですから。(笑)

 ADSLか何かでつないで、すごく遅いやつでしたが、初めて99年の年末にネットというのを見たんですけど、ちょっと食材の卸のところを見ようと思ったら、金を払わないと中に入れませんというわけです。

会員制だったということですか。

村橋氏:ええ。食品スーパーに入るのに入場料を取るような、そんなことが通用するのかみたいな。でも見えないんじゃしょうがないということで、息子に年会費を6万円ほど払いに行かせて。

年会費が6万円もしたんですか。

村橋氏:そうなんですよ、払わなきゃ入れないんですよ。それで中に入ってみたら、ネットのことは分からないけれども、中小企業が使えるようなサイトじゃないということはすぐに分かった。これは大企業同士が見積もりを出すなど何回もやりとりをした後に、じゃあ、取引を始めようかというような仕組みのように見えたんです。

 でも日本の場合、99.7%が中小企業ですよね。大多数が使えなければ意味がないということで、俺が作ろうと。そのときにやると決心しましてね。すぐにマンションの1室を借りて、年が明けたら机とパソコンを持ち込んで、電話を1本引いて、2月25日にスタートしたんです。

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