パソナグループが本社機能の移転を進める兵庫県の淡路島で、座禅などを体験できる新たなサービスを事業化した。禅にヨガを融合した独⾃の瞑想(めいそう)プログラムを開発、宿泊施設も併設して集客を始めた。新型コロナウイルス禍を経て従業員の「ウェルビーイング」(⼼⾝の健康や幸福)に気を配る企業が、団体で利⽤するケースも増えている。現地を訪れ新たな「禅」のサービスを体感、人気の理由を探った。

 地上からの高さが最大14メートルあるウッドデッキの上で座禅を組み呼吸を整える。ウッドデッキは全長100メートルと長大で、視界を遮るものは柱くらいしかない。視線の先と眼下に広がるのは緑豊かな森。心地よい風が吹き抜け、どこからか小鳥たちのさえずりが聞こえてくる。

全長100メートルと長大なウッドデッキからは豊かな自然を見渡せる(写真=下:行友 重治)
全長100メートルと長大なウッドデッキからは豊かな自然を見渡せる(写真=下:行友 重治)

 ここは淡路島の北部、淡路市の山沿いの一角にある「禅坊 靖寧(せいねい)」。パソナグループと子会社のawajishima resort(兵庫県淡路市)が、4月末にサービスを始めた禅の体験施設だ。建築界のノーベル賞ともいわれる「プリツカー賞」を受賞した世界的建築家、坂茂氏が設計を手掛けた。

自然と調和した屋外型施設

 「自然との調和」をテーマにしたとあって、建材の85%が木材。坂建築の特徴である「紙管」も内装にふんだんに利用した。紙管とはトイレットペーパーの芯のような形をした紙の筒で、デザイン性に優れるうえ省資源にもなる。

 パソナグループの大日向由香里常務執行役員は「閉じられた空間ではなく、淡路島の自然に溶け込んだ開放的な空間を作りたかった。そんな特別な場所で禅の新たな可能性に触れてもらえれば」と話す。

 「吸ってー、吐いてー」。記者が参加したこの日は、インストラクターの茶木めぐみさんの指導のもと、老若男女や外国人グループが座禅を組み瞑想していた。特徴は禅にヨガの要素を取り入れた独自のプログラムだ。座禅をし続けるだけでなく、体を動かしながらヨガの呼吸法やポーズも取り入れ心身をリラックスさせる。

自然に囲まれたウッドデッキの上で瞑想し、心身をリラックスさせる(写真=行友 重治)
自然に囲まれたウッドデッキの上で瞑想し、心身をリラックスさせる(写真=行友 重治)

 茶木さんは「あれこれ考えてしまう己を含めて、ありのままの自分を見つめ直す。その先に自然とできる『余白』を感じてもらえれば」と語る。訪れていた兵庫県の50代の女性は「いつもの瞑想とは全く違い、自分と自然の境界線がなくなるような体験ができた」と満足そうな様子だった。

 プログラムでは瞑想の他にも、心を落ち着かせながらお茶をたて「佗(わ)び・寂(さ)び」の美意識を会得する茶道や、言葉を一筆ずつ和紙にしたためる書写などのアクティビティーがある。

お茶をたてて「わび・さび」の美意識に触れる(写真=行友 重治)
お茶をたてて「わび・さび」の美意識に触れる(写真=行友 重治)

 砂糖、油、乳製品、小麦粉、動物性食品を一切使わない「禅坊料理」も供される。野菜や調味料など食材も淡路島産が中心で、料理人が地元のヨモギやタケノコを自ら採取する。見た目も自然を丸ごといただくといった趣。記者も食したが、記憶に残る滋味深い味わいだった。

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