業務用クラウドサービス「キントーン」(Kintone)を手がけるサイボウズは、新入社員を取締役に抜てきしたという型破りな人事戦略で知られる。ベテランになっても現場と管理職を行き来できる自由なキャリアパスも特徴だ。どうやって経営しているのか、青野慶久社長に疑問をぶつけてみた。

日本で長く続いてきた新卒一括採用を巡っては賛否両論ありますが、どう見ていますか。

青野慶久サイボウズ社長(以下、青野氏):問題は一括採用の良しあしではなく、一括採用でしか採用できないケースですね。一括採用そのものにはメリットもデメリットもありますから。まとまって採用できればまとまって研修できて、同期の意識も生まれ、長く働くときには文化をつくる意味でプラスに働きます。ただ、それしか入り口がないのは困ります。

 就職活動のタイミングがずれるケースはいろいろありますよね。留学組もそうだし、もう既卒でどうしようかな、就職どうしようかなと思っていた人が、「よし就職しよう」と思って企業の門をたたいたときに、「あなたはタイミングが合わなかったのでアウトです」といってはじいてしまうところがあるんですよね。

 一括採用は続ければいいと思うのですが、それだけではない採用方法もあったほうがいい。どんどんチャレンジしたほうが、多様な人材を集められます。あまりイチゼロで議論したくないというスタンスですね。例えば海外の大学を夏に卒業した場合、10月から働き始める人もいます。

青野慶久(あおの・よしひさ)氏
青野慶久(あおの・よしひさ)氏
サイボウズ社長。1971年生まれ。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)を経て、97年8月松山市でサイボウズを創業。2005年4月から現職。愛媛県今治市出身。(写真:伊藤菜々子)

異動したいなら早いうちに

多くの会社で新入社員が配属先について敏感になっており「配属ガチャ」という言葉が広まりました。サイボウズでは、「職種確約採用」を取り入れていますね。

青野氏:その点も、学生によって受け止め方が多様だと思っています。「僕はどうしてもこの仕事をしたいんだ、だからあなたの会社を受けるんです」といった人に対しては、「あなたはこの職種で採用しますね」という方式によって、非常にいい関係が成り立つと思います。一方で「まだそんなに何か職種には確信が持てなくて、入ってからいろいろ見たいです」という人には、入社前に確定しなさいと言うのも変な話ですから。

 だから、入り口としては選択肢を用意しておくということで、学生に合わせて対応できるようにしています。いわゆる「ガチャ」がむしろ好きな人にはガチャを引いてもらったらいいし、ガチャでは嫌だという人には選んでもらったらいい。そしてサイボウズの場合は、入社してからも柔軟にしています。「配属された部署で1カ月やってみたけれど違うな」と思ったら、率直に言ってもらえれば、それでもう異動できます。

 いつでも異動は可能なので、新入社員にも適用しているのです。実際、早い場合は配属後数週間で異動した人もいます。違和感を覚えたまま過ごすより、異動するなら早いほうがいいですから。

サイボウズ東京オフィスの内部。地球上に様々な動物がいるのと同じように社員の個性もキャリアも十人十色と捉えている(写真:伊藤菜々子)
サイボウズ東京オフィスの内部。地球上に様々な動物がいるのと同じように社員の個性もキャリアも十人十色と捉えている(写真:伊藤菜々子)

すぐ異動したいとき、社内の手続きは簡単なのですか。

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