仕事を通じた「自らの成長」を重視するZ世代の人材を引き付けるには、何が必要なのか。働き手が常に出入りする現代の状況を受け入れ、人事制度の改革を重ねるソニーグループと富士通の事例を見る。東大の柳川範之教授など有識者は曖昧なキャリアプラン、ところてん方式の社員教育、上意下達のむちゃな事業推進などと決別し、経営の在り方を抜本的に見直すことが人材獲得に欠かせないと指摘する。

 「裸や半裸はNGですが、面接は私服でOKです」。77年の歴史を持つ大企業ながら、ソニーグループが自らの採用方針を紹介している動画は突き抜けている。登場するのはお笑い芸人のハリウッドザコシショウ。面接会場にパンツ一丁で現れ、さすがに面接官にそれはダメだと諭される。そこで、どこまで服を着ていれば許容されるのかを探っていくという内容だ。

形式ばらないフランクな雰囲気が特徴的なソニーグループの採用方針動画の一場面
形式ばらないフランクな雰囲気が特徴的なソニーグループの採用方針動画の一場面

 儀式的な就活は要らないという、同社からのメッセージが込められている。その中で、社会人として最低限のマナーは必要ということもユニークな手法で提示。決して「何でもアリ」ではなく、守るべき一線の中でどれほど創造力を発揮できるかが問われるのだ。

 採用部の種子島由子統括部長は次のように語る。「ソニーは人の夢を実現すべく成長してきた会社。ファウンダー(創業者)だった盛田昭夫(元会長)の強い思いを引き継ぎ、『クリエイティビティ(創造性)とテクノロジーの力で、世界を感動で満たす』というパーパス(存在意義)に共感してもらえる人材を求めている。そのため、いかに多様な人材を入れられるかが大事」

ソニーグループ採用部の種子島統括部長は採用する人材の多様性を重視する
ソニーグループ採用部の種子島統括部長は採用する人材の多様性を重視する

 ソニーは2023年3月期の連結売上高が約11兆5400億円と、過去最高を記録した。その屋台骨はエンターテインメントで、社員の柔軟な発想力が源泉となっている。24年卒は1400人ほど採用する予定で、一人ひとりの個性を見極める。普通なら知らせない性格検査の結果もあえて学生本人にフィードバックする。自分の長所を一段と語りやすくする計らいだ。

社員の出入りが自由な風土

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