新人・若手育成の手法に詳しいリクルートマネジメントソリューションズの桑原正義主任研究員に「Z世代」と呼ばれる若手社員の離職防止策や育成ポイントを聞く連載の2回目。前回は、Z世代の新入社員が連休後にかかりやすい「新しい5月病」について聞いた。

 新しい5月病の背景にあるといわれるのが「挫折や失敗を乗り越える経験が少ない」「自分らしさや、やりがいを大事にする」といった、Z世代ならではの生い立ちや価値観だ。桑原氏によれば、こうした特徴が会社組織内の価値観や基準と相いれず、メンタル不調や離職の引き金となりやすいのが入社2年目であるという。「2年目の壁」に対して、周囲はどのような対応や配慮が必要なのだろうか。

(聞き手は日経ビジネス編集 馬塲貴子)

リクルートマネジメントソリューションズの桑原正義主任研究員(写真:陶山 勉)
リクルートマネジメントソリューションズの桑原正義主任研究員(写真:陶山 勉)

前回のお話では、Z世代の特徴として「上の世代よりも失敗や挫折を乗り越える経験が少ない」とありました。彼らは具体的に仕事上のどのような点を挫折と感じるのでしょうか。

桑原正義:・リクルートマネジメントソリューションズ主任研究員(以下、桑原氏):入社3年目までの若手社員約400人を対象に、入社1年目の時どのような悩みや壁にぶち当たったのか、調査したことがあります。それによると、一番多いのが「想定以上にできない自分にショックを受け、自信を喪失した」でした。次に多かったのが「周りにどう思われているか不安で、自分を出せなかった」。3番目が「与えられた仕事の意味ややりがいが感じられず、やる気が出なかった」と続きます。できない自分に衝撃を受けてしまう、自分らしく仕事ができずにモチベーションが下がってしまう、といった点が悩みや壁のポイントとして浮かび上がります。

 自信喪失に関しては、社会的セーフティーネットが整備された中で失敗を乗り越える経験が積みにくい環境でしたので、こう感じるのが普通だと思います。またZ世代に限らず、今の企業が直面しているビジネス環境はそう生やさしいものではありません。最近ではVUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)という言葉があるように、世の中の変化は早く、先行きが不透明で将来予測が困難な時代です。

 以前のビジネスのやり方は、正解というものがどちらかというと存在していて、そこに全員で向かっていく時代でした。経営トップや経験値の高い人、能力のある人が上に立ち、その人たちの判断や決定に従っていけば、多くの人が幸せになれる時代でした。でも今はそうではありません。正解がなくて、自分たちで答えを見つけていかなくてはならない。以前より仕事の難易度が高くなっているのです。

 このハイレベルなビジネス環境に、これまで困難を乗り越える経験の少なかったZ世代が入ってくるのですから、ハードルはさらに高くなります。今の新入社員は、上司世代の方々以上に高い壁を乗り越えなければならないといえます。

 上司世代の人たちは、失敗経験もあるので、「最初から上手くいかなくても当たり前でそう気にする必要ない」と思っていますけど、Z世代の若手にとっては自信喪失ややる気の低下につながってしまう。こうした状況が続くと「自分にもっと合う仕事があるのではないか」と考え始めてしまうように思います。

Z世代が育った環境に加えてVUCA時代の潮流がダブルで効いてくるということですね。悩みや挫折につながるもう1つの要因「自分らしく仕事ができない」点についてはどうでしょう。

桑原氏:Z世代は、SNS(交流サイト)などネットワークの中で過ごすのが当たり前になってます。人からはみ出ることのリスク、ずれた意見を言うことによるダメージの怖さといったものを、肌で感じています。一人ひとりと話すと自分の意見や思いはしっかり持っているなと感じますが、それを出しても大丈夫という安心感がない限り、なかなか言葉や表情に出さない。一方で「働きがい」「ウェルビーイング(心身の健康や幸福)」「自分らしさ」といった内発的なものを仕事のモチベーションにしている世代でもあります。自分の価値観と相いれない環境で頑張ってタフな成長や現在の処遇を取るか、自分を発揮できる環境での仕事を目指すかでいえば、後者を大事にする人が増えている感覚があります。

Z世代が育った環境の変化(出所:リクルートマネジメントソリューションズ)
Z世代が育った環境の変化(出所:リクルートマネジメントソリューションズ)
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