今年の春闘は大企業を中心に「満額回答」が相次ぎ、長く低迷していた日本の賃金に上昇の兆しが見えてきた。転機が訪れているのは正社員の賃金ばかりではない。小売りやサービスなど、女性を中心としたパートを多く抱える業界は春闘に先駆ける形で時給引き上げに踏み切ってきた。食品スーパー大手のライフコーポレーションもその一社。「このまま手をこまぬいていては、業界が衰退してしまう」。同社の岩崎高治社長は危機感をあらわにする。
■主な連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
・イオン、パート7%賃上げの衝撃 人件費はコストでなく投資
・年収の壁は撤廃を 連合会長が激白「このままでは企業がもたない」
・「今年の春闘を変革点に」 UAゼンセン会長が語る賃上げと年収の壁
・日生、営業職5万人の給与財源増 「組織を維持できなくなる前に」
・企業も国も主婦優遇を過去の話に 昭和女子大・八代特命教授に聞く
・女性の推定年収ランキング 年収アップ額首位は「セールスフォース」
・NTTもグリコもあなたの会社も 育児中だって女性は昇進できる
・日立と富士通、ジョブ型が女性活躍推進 もう昇進も昇給も諦めない
・いでよ女性リーダー キャリアアップ意識を高めるのは上司の役目
・女性起業家のファイナンス「悲劇的に困難」 金融庁チームの焦燥感
・「出産は契約違反になるの?」不安を抱える女性起業家に支援の動き
・女性起業家をフェアな厳しさで育成 SHEとANRIのバランス感覚
・「年金基金は起業家にもっと資金供給を」 日本総研・翁百合理事長
・パートの73%が就業調整 「年収の壁」見直しを訴えるライフ社長(今回)
小売りやサービス業を中心に、パート時給を引き上げる動きが相次ぎました。ライフコーポレーションも2022年度上半期(3~8月)に時給を平均でおよそ44円(約4%)引き上げています。
岩崎高治ライフコーポレーション社長(以下、岩崎氏):パートナー(パート)にお支払いする時給は10年前と比較すると2割ほど上がっています。今回の44円という時給の引き上げ幅は過去に比べれば大きいのは事実ですが、もともと00年代から当社は人への投資を重視していたのです。

18年に発表した中期経営計画では、現場でお客様に直接対応するパートナー(パート)の待遇改善を明確に打ち出しています。当時、私は会社が停滞しているのではないかと懸念しました。本社の権限が強くなる一方でお店に元気がなくなっていた。頭でっかちになってしまっているなと感じたのです。本社が限られた情報でもって現場に指示を出していたのでは変化に取り残され、成長はいずれ頭打ちになります。現場を中心に会社をつくり変えなければならない、本社はサポート役に徹して権限を現場に渡していかなければならないと考えたわけです。
近年はパートの待遇を改善しなければ人手を確保できないという危機感を持って時給引き上げに取り組む企業も少なくありません。
岩崎氏:もちろん、人手不足への対応という観点でも時給引き上げは重要です。実際に人手不足は深刻化しています。待遇改善を打ち出した18年当時も人材の確保には苦労していましたが、足元の状況はもっと厳しい。今までに感じたことのない深刻さです。
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