スタートアップの資金調達額で男女格差を改善するには、ベンチャーキャピタル(VC)の資金源を厚くすることも重要だ。日本総合研究所の翁百合理事長は、年金基金がスタートアップを含めたオルタナティブ投資をもっと増やすべきだと説く。
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日本の賃金格差を是正するには、女性経営者が増えてロールモデルとなることも重要です。しかし、金融庁は創業資金を得る段階でジェンダーギャップがあると指摘しています。
翁百合・日本総合研究所理事長(以下、翁氏):徐々に女性の起業家が増えてきた一方、スタートアップの資金調達額(上位50社)に占める女性比率は2%、新規上場企業に占める女性社長比率も2%と本当に少ない状況です。スケールアップを目指す際の厳しさを解消しなければなりません。
投資する側のベンチャーキャピタル(VC)に女性が少ないのも、女性起業家への理解が不足してしまう一因です。キャシー松井さん(MPower Partners Fundのゼネラル・パートナー)のような方はまだ限られています。世界的にもVCには男性が多いものの、ジェンダーバイアスが働かないよう注意が必要です。
![翁百合[おきな・ゆり]1984年慶応義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了、日本銀行入行。92年日本総合研究所副主任研究員。2000年主席研究員、06年理事、14年副理事長、18年から理事長(写真:遠藤素子)](https://cdn-business.nikkei.com/atcl/gen/19/00342/032800093/p1.jpg?__scale=w:500,h:333&_sh=02e04105b0)
海外でもスタートアップ向けファイナンスの男女格差が課題ですが、日本はリスクマネーの絶対量が少ない中、その分配が偏ることが問題でしょうか。現状では国内VCからも「日本だと成長ステージごとにVCが分かれてしまっている」との声が聞かれます。
翁氏:日本で息の長い資金がなかなかベンチャーに入ってこない状況は、女性起業家にとっても課題です。特にディープテックの分野は研究開発段階から黒字化までの道のりが長く、それに応じた資金調達が求められます。
米国では私的年金がVCにかなり資金を投じている一方、日本の企業年金でオルタナティブ投資としてVCも組み込んでいる例は少ないのが現状です。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)はVCへの投資を始めており、これを契機としてアセットオーナーの意識改革が必要でしょう。
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