国内転勤より海外転勤
転勤に抵抗を感じる人が多い半面、気になるのは就職時に転勤の有無を判断材料にした人は4割弱と少数派であること。判断材料にした人の59.8%は「国内転勤がない」ことを基準にしており、「国内転勤がある」の14%を大きく上回った。海外転勤になると抵抗感を持つ人は少し減るようで、「海外転勤がない」は31%、「海外転勤がある」は12%だった。
転勤への意向は、ライフステージに左右されやすい。転勤を就職時は気にしなくても、結婚・出産などライフステージの変化に応じて転勤する意欲が下がる傾向がみられる。「20代で地方転勤を経験し、仕事は大好きだったが、今後の人生で転勤のたびに家族を振り回すことはできないと思って転職した」「20代は転勤を含めていろいろ経験したいと思っていたが、30代になると親が高齢化していることもあり、嫌になった」などの声があり、退職・転職を避けるためには、働き方を適宜見直せる制度が重要になる。

いざ転勤を打診されると、断る人はわずか2%にも満たない。とはいえ、「喜んで受け入れた」人は50.2%で、「しぶしぶ受け入れた」人が48.3%。自由回答には「転勤を断ると関係のない他部署に異動となる」や「昇格の条件に転勤がある」などの意見が目立ち、抵抗はありつつも将来のことを考えて甘んじて受け入れている様子がうかがえる。家族やパートナーに反対されたケースは少なく、約1割にとどまった。
転勤を打診された1割の人は、転勤先の住居費や引っ越し代の負担、移動用のクルマの確保などを条件に転勤を受け入れている。どうしても断れない場合は、会社側と条件を交渉することで、家族や自身の負担を軽減できることもある。ただし、そのためには企業側に相談できる環境を整えることが求められ、風土の見直しなど対応が必要だ。
多様な働き方、カギは在宅勤務
JTBでは働き方を多様化する一手として、2020年10月から「ふるさとワーク制度」を導入している。転居転勤を伴う辞令が出ても、生活の拠点として登録している自宅からリモートワークできる制度である。これにより単身赴任や訳あって転居できない人でも「転勤」を受け入れやすくするものだが、22年3月時点でこの制度を利用しているのはわずか35人。業務内容によっては適用できないという課題も残る。制度設計は容易ではない。

カギとなるのは在宅勤務の浸透だ。アンケートでは、「リモートワークの一般化を機に、転勤を減らすべきだが残してもいい」と回答した人は56.2%を占めた。新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにリモートワークが急速に広まった。この流れがポストコロナ社会でも継続されるかどうかが、転勤を含めた人材マネジメントや制度見直しの要となるだろう。
調査名:日経ビジネス・転勤に関するアンケート
調査時期:2022年2月18日~3月18日
調査対象者:一般外部モニター(調査協力:クロス・マーケティング)、日経BPのウェブメディア読者
調査方法:ウェブフォーム
回答者数:1033人
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