日経ビジネスが社員口コミサイトを提供するオープンワーク(東京・渋谷)の協力を得て、女性の年収に関するランキングを作成したところ、総合商社や外資系企業が上位を占めた。25~40歳までの「年収アップ額」では、不妊治療などの支援制度も用意するセールスフォース・ジャパン(東京・千代田)が1位となった。一定以上の口コミを集められた企業が対象で「絶対的順位」ではないが、男女の賃金格差についての開示も迫る中、日本企業は一段とシビアな目線にさらされそうだ。
■主な連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
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2023年3月期からの有価証券報告書に「男女の賃金格差」についての開示が義務付けられ、賃金格差を巡る問題はますます関心が高まりそうだ。日経ビジネスは社員口コミサイトを提供するオープンワーク(東京・渋谷)の協力を得て、女性の年収に関するランキングを作成した。同社で一定以上の口コミを集められた企業が対象のため、「絶対的順位」ではなく、全体の傾向をつかむために見ていただければ幸いだ。
まず30歳時点の年収ランキング。トップ10を席巻したのは総合商社だ。30位まではITやコンサルティング、広告、製薬などの企業が並んだ。「数年前から新たな評価制度が導入され、若くしてマネジャー職になる人材も登場」(電通、営業)、「男女の待遇差はない。男性も子どものお迎えで中抜けしたり、有給を取得する人が多く、(略)女性も出産・育児による休暇取得や時短に負い目を感じることはない」(PwCコンサルティング、コンサルタント)と、女性が活躍しやすい土壌があることが分かる。
オープンワークは30歳時点で男女の年収格差が小さい企業も抽出しており、こちらはキヤノンと携帯電話販売代理店のベルパークが1万円差で最少だった。キヤノンは早くから「ジョブ型」の給与体系に切り替え、ベルパークは「評価制度の設計が他の上場企業に比べて細かい。一般的な上司のお気に入り評価が入らない仕組みで良い」(販売、男性)という。国税局や裁判所など専門性の高い分野もランクインした。
30歳時点の年収が高い企業の中から、継続的に一定以上の回答数が確認できた企業の年収の推移を追ったランキングが上だ。25歳から40歳までに、どのような年収をたどるかを推定している。
1位の日本マイクロソフトは2月に初の女性トップとして津坂美樹社長が就任。常務や執行役員などの経営執行チームの3割程度が女性だ。給与が20代から高く、その後も安定して昇給するようだ。

25歳から40歳までの「年収アップ額」で1位だったのはセールスフォース・ジャパン(東京・千代田)。昇給額は606万円だった。15年間で年収が2.1倍になる計算だ。「前職の日本企業と比べ年収が2倍になった」(エンジニア)、「実力を見たきちんとした評価制度」(カスタマーサクセス)との声がある。
同社は、不妊治療や養子縁組にかかる費用を償還する制度を拡充するなど福利厚生も手厚く、グローバルで男女の賃金格差を是正し、社員らのやる気を引き出している。昇給額は電通、アマゾンジャパン、野村総合研究所なども高い。
一方、オープンワークによれば、25歳から40歳にかけて公平に評価され続けたとしても、「一部の生命保険会社の営業職などでは年収がダウンするケースもある」という。
2つのランキングからは、総じて外資系企業で女性の待遇がいいことが分かる。海外では米アドビが性別だけでなく人種も含めた賃金の平等に動く。日本は主要7カ国(G7)で男女の賃金格差が最大で、この是正に取り組まない限り、優秀な女性がどんどん海外に流出しかねない。日本企業は、女性が「力を発揮できそうだ」と思える制度設計や風土の醸成にもっと力を入れる必要がありそうだ。
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