女たちの賃上げの波は、現場の正社員にも広がっている。日本生命保険は約5万4000人に達する正規の営業職員の給与財源を7%程度引き上げることを決めた。人口減が加速する中、営業職員が長く安定して活躍できる体制を整え、組織の維持を狙う。グローバル化が曲がり角を迎え、国内外で安い労働力を当てにした経営は難しくなった。女性活躍の推進は、日本企業が男性中心のモデルから決別し、人材の多様化を通じてイノベーションを起こせるようになるかの試金石だ。
■主な連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
・イオン、パート7%賃上げの衝撃 人件費はコストでなく投資
・年収の壁は撤廃を 連合会長が激白「このままでは企業がもたない」
・「今年の春闘を変革点に」 UAゼンセン会長が語る賃上げと年収の壁
・日生、営業職5万人の給与財源増 「組織を維持できなくなる前に」(今回)
・NTTとJTB、「リモート」で育児と両立 コロナ禍対応を奇貨に
・富士通と日立、「ジョブ型」で女性はキャリアを自ら選び取る
・スタートアップも男性優位社会 「出産の壁」を壊せ、女性起業家
・「売り場の魅力を高めるには賃上げが不可欠」ライフ岩崎社長
・「配偶者手当を廃止し、子ども手当に」昭和女子大・八代特命教授
日本生命保険は昨年12月、約5万4000人に達する正規の営業職員の待遇見直しに動いた。100億円以上を投じて営業職員の給与財源を7%程度引き上げることを決めたのだ。「職員が長く安定して活躍できる体制を整えていく」(清水博社長)狙いがある。
もう大量離職を看過できない
保険の営業職は大量の人材を採用して多くの離職者を出す、いわゆる「大量採用・大量離職」の職場と呼ばれている。職員の9割以上は、いわゆる「生保レディー」と呼ばれる女性で、入社3年目以降は給与の半分が成果給となる。契約が取れなければ手取りが激減するため、思うように稼げず退職する職員は少なくない。清水社長は「職員はお客様の信頼を獲得し、その本音を引き出していかなければならない。保険の営業は簡単な仕事ではないため、『自分には合わない』と短期間で業界を離れる人が一定数いるのは残念ながら事実」と話す。


だが大量離職を「仕方がない」と片づけられる状況ではなくなった。同社は1400万人を超える顧客を抱えているが、今後は日本の人口が減少し、働き手も減っていく。当然、職員の採用も難しくなる。手をこまぬいていれば同社の営業組織は縮小が免れず、既存の契約者にサービスを提供し続けることが難しくなる。そんな危機感を持っているという。
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