2024年春に卒業する大学生らへの企業説明会が3月に解禁され、採用活動が本格的に始まった。企業は新型コロナウイルス禍の影響から回復し、採用意欲を高めている。目立つのは、学生に直接連絡を取る「スカウト型」と呼ばれる手法。各社が攻めの採用にかじを切る。

多くの企業がアフターコロナの事業環境が好転すると見込み、2024年卒の採用を増やす。リクルートが大企業、中小企業とも対象にした調査「就職白書2023」によると、大学生・大学院生の採用予定は平均29.5人。データを取り始めた21年卒の実績と比べ19%、23年卒実績と比べると10%多い。
企業が採用の数をコロナ禍のときより増やすこと自体は自然な動き。焦点の一つは、「採用したい人材」を確保できるかどうかにある。そこで増えているのがスカウト・オファー型の手法だ。民間企業が運営する様々な専用サイトを通じ、学生に直接声をかける。
就職白書2023によると、24年卒を対象にこの手法を活用する予定の企業は23年卒実績より5.7ポイント増え28.5%。5000人以上の企業に限ると10.5ポイントも増え47.3%になる。マーケティング職の応募は多いが技術者を採りたい食品会社、業績は安定しているが新規事業立ち上げのためにベンチャーマインドのある学生が欲しい機械メーカーなど、目的は様々だ。
利用企業、3年で2倍超す
スカウトサイト「オファーボックス」運営のi-plug(アイプラグ)はこの分野の草分けで、利用が急増している。24年卒の学生の登録数は、23年1月末時点で13万3000人。20年1月末に登録していた21年卒の数字より8割多い。利用企業は23年1月末の累計が約1万3300社と3年で2.3倍になった。
学生の登録項目には名前・大学・学部など基本情報の他、自己PR、自分が将来なりたい姿などがある。業界・職種・勤務地を第3希望まで、また希望する企業のタイプを大手老舗・中小・メガベンチャー・ベンチャーから選ぶ。企業側はこれを見て、面談を受けてほしい旨などのメッセージを送る。企業にもよるが、エントリーシートの選考をパスできることが多い。1次面接もパスし、2次面接から他の受験者と同じにする会社もある。
広島銀行は21年卒の採用からスカウト型を取り入れている。狙いは理系学生だ。19年から通帳をオンラインで閲覧できるサービスを開始したほか、キャッシュレス化対応などでIT系人材の需要が増加している。これまで、就職希望者は文系学生が中心で、理系学生は少なかった。「勤務先のある中国・四国地方に勤められる理系学生」を探したいという。スカウト型のサービスでは学生の希望する勤務地や専攻などの条件を指定して検索し、これまで接点を持てなかった学生にアプローチできる。スカウトした学生を理系学生向けの座談会イベントに呼ぶなどして、まずは周知活動に生かしている。
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