分配政策を重視し、「新しい資本主義」を掲げる岸田文雄首相が真っ先に取り組んだのが賃上げ税制だ。大企業や中堅企業については、従業員の給与を前年度比で3%引き上げることを最低条件として、法人税から差し引く控除率を大幅に拡充した。首相の最側近の一人として、制度の具体的な設計を担った自民党の宮沢洋一税制調査会長に、経緯や趣旨を聞いた。

宮沢洋一(みやざわ・よういち)氏
宮沢洋一(みやざわ・よういち)氏
旧大蔵省出身で、経済産業相などを歴任した自民党を代表する政策通。2021年の党税制調査会長就任は2回目となる。岸田文雄首相と同じ広島選出で、首相のいとこに当たる。(写真=竹井俊晴、以下同)

昨年末にまとめた2022年度税制改正大綱に、賃上げ税制を盛り込みました。

宮沢洋一・自民党税制調査会長(以下、宮沢氏):「新しい資本主義」の旗印を掲げる岸田文雄内閣が成立して初めての税制改正において、まずは賃上げからということで、賃上げ税制の拡充に取り組みました。実際の賃上げにつながる、インセンティブとなるような税制をつくりたいということで始めたわけです。 

 労働分配率の引き上げを目的にしていましたから、基本給を対象にするのが本来の筋だと私自身は思っていましたし、自民党の税制調査会の幹部の間でもそうした意見がかなり多かった。一方で経済界からは、できもしないような形の税制をつくられても使わないよ、といった話もありました。 

経済界に配慮して、賞与も対象とする制度設計で決着したということですか。

宮沢氏:運動会の競技種目にパン食い競走というのがありますね。パンをあんまり高いところにつるしてしまうと、よっぽど運動神経のいい人以外には取れないし、低すぎると誰でも食い付けてゲームにはならない。適当な高さにパンをセットすることが一番大切です。

 税の仕組みにも同じようなところがあります。基本給だけを対象にしていては、限られた企業しかついてこない。一方で、賞与を対象にしてしまうと1年限りとなって、恒常的な賃上げにはつながらない恐れがある。そんな中で出てきたのがマルチステークホルダー宣言です。賞与を引き上げた場合でも優遇を適用する代わりに、大企業には宣言を求めることにしました。

税優遇の代わりに求める宣言

マルチステークホルダー宣言ですか。具体的にはどんなものですか。

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