試行錯誤の末に出来上がった電脳交通のビジネスプラン(前回記事:「電脳交通」誕生に影響を与えた2人の乗客)。現場のオペレーションに即してつくられた電脳交通の配車システムは、改善を続けるなかで運転手、利用客ともに意識しないでも使えるレベルに達していった。中小タクシー会社のみならず、大手タクシー会社からの引き合いが増えている。

 廃業寸前だった家業のタクシー会社を再建する過程で培った経験は決して無駄ではなかった。徹底した現場主義が電脳交通のシステムの細部にまで生かされている。

 タクシー会社を支援する徳島発のスタートアップ、電脳交通が誇るのがそのビジネスの根幹を支える自社開発のクラウド型の配車システム。タクシーの運転手や配車係が容易に操作でき、遠隔地からのタクシー会社の配車業務も可能にした。業界では革新的ともいえるこのシステムが、タクシー会社のオペレーションを一変させている。

 「すぐお迎えに上がりますので、少々お待ちください」。2021年4月中旬の午後、東京都あきる野市の客から電話を受けたオペレーターの棚原光樹はやり取りをしながら、目の前のパソコンを操作。客が指定する場所にタクシーを手配すると電話を切った。この間、1分ほど。あっという間に配車作業を終えた。

 一見、都内のタクシー営業所の風景のようでもある。だが、電話を受けた棚原がいるのは、実は直線距離で東京から約500キロメートルも離れた徳島市内だ。棚原はタクシー会社の従業員ではなく、電脳交通が運営するコールセンターでアルバイトをする大学生である。都内への配車後は、今度は松山市内からの電話を受け、これまた流れるようにタクシーの手配を終えた。

 電脳交通は、この徳島市内のほか岡山市、神戸市、北九州市の計4カ所にコールセンターを構える。約80人のスタッフがシフトを組み、24時間体制で全国のタクシー会社の利用客からの電話を受けている。そのため、コールセンターのスタッフは、様々な地域からの電話に対応する必要がある。

 この日、棚原が担当したタクシー会社は東京都や徳島県、愛媛県などに本社を置く10社以上にのぼる。全く土地勘のない徳島市外からの電話も相次ぐ。だが、それでもスムーズな配車作業を可能にしているのが、電脳交通の配車システムである。

コールセンターのオペレーターが操作する画面。遠隔地であっても容易に配車できるよう、細部まで配慮された工夫がなされている
コールセンターのオペレーターが操作する画面。遠隔地であっても容易に配車できるよう、細部まで配慮された工夫がなされている
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