残念ながら主要7カ国(G7)の中で、日本は男性の幸福度が最低だ。「夫は外で働いて家族を養うべきだ」などと、性別で役割を決めつける社会通念が日本男児のストレスになっている。「妻は家事に専念すべきだ」という、女性を家庭に縛り付けるような考え方が性差別なら、男性を職場に縛り付けている価値観だって差別的なはず。

 「亭主元気で留守がいい」などと妻からやゆされて、夫は自虐的に笑っているわけにはいかないのだ。忘れられた差別問題に光を当て、男性たちを職場から解放せねばならない。男はつらいよ――。

 東京都内のメーカーに勤務する佐野直斗氏(仮名)は、半年ほど前に第3子となる長男が生まれてから、毎日のように午後5時の定時に退社している。自宅で待つ育児休暇中の妻の下になるべく早く帰って、子育てを引き継ぐためだ。

 先日、いつものように帰ろうとすると上司に呼び止められた。何事かと思うと、「売り上げが伸びないのは、あなたが育児のために皆より早く帰るせいだ」などと叱責が始まった。

仕事をないがしろにしたとして、佐野直斗氏(仮名)は1時間にわたり説教された。写真はイメージ(写真:PIXTA)
仕事をないがしろにしたとして、佐野直斗氏(仮名)は1時間にわたり説教された。写真はイメージ(写真:PIXTA)

 佐野氏は上司に対して、「定時で帰ることを前提にどう売り上げを立てるか考えるのがあなたの仕事だろう」と反論している自分を空想しながら、1時間にわたる説教をしのいだ。

 佐野氏は、「自宅に着いてから、今度は帰りが遅れたことを妻に平謝りした」と苦笑する。佐野氏には「男性にも子育てする権利がある」との信念があり、「上司に『家事や育児は女性がやるもの』という価値観があったら、これほど厄介なことはない」とぼやく。

4人に1人の男性が嫌がらせ経験

 日本は「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という、性別役割分担意識が極めて強い国である。男性だけでなく、女性にもこの封建的な考え方が広く浸透していることは、「『夫に養ってほしい』が7割、日本女性たちの不都合な真実」で報告した通りだ。佐野氏を叱責した上司もまた、女性である。