こうした「女性は夫に養ってもらっているので、非正規労働者の賃金は低くても構わない」という性別役割分担意識は、日本社会全体に根付いている。その証拠に、非正規の賃金の低さが社会で広く問題視されるようになったのは、かつてほとんどいなかった男性の非正規労働者が増加した00年代後半からだ。
誰も顧みなかった女性たちの低賃金
このころ「ワーキングプア」という言葉が一般的に使われ始め、過酷な労働環境を描いた『蟹工船』がベストセラーとなり、「年越し派遣村」の様子が盛んに報道された。非正規の男性単身世帯や、非正規の夫を家計の担い手とする世帯の貧困が世間から注目されることで、女性を含む非正規労働者全体の待遇の悪さにようやく光が当たった。
だが、そのはるか以前から女性の非正規労働者は賃金が安かった。そして性別役割分担意識に基づいてほとんどの日本人がそのことを当たり前のこととして受け止めていた。

もちろん、非正規労働者は転勤がない、緊急時の休日出勤がないなど、一般的に職場での責任は軽い。その分、正社員と同じ仕事をしていても、賃金は安く抑えられているという理屈が成り立つ。ただ責任の軽さを加味しても、日本は賃金水準の低さが際立つ。
正社員をフルタイム労働者、非正規をパートタイム労働者と見なして比較した場合、日本の非正規労働者の時給は正社員の6割にとどまっており、欧州諸国の7~8割を大きく下回る(日本総合研究所の「コロナショックが促すジェンダー平等」から)。
また非正規労働者であっても、実際には重い責任を負わされていることが珍しくない。
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