「夫は外で働き、女性は家庭を守るべきだ」との性別役割分担意識が日本人の間に広く浸透していることは、前回報告した通り。そんな封建的な価値観に基づき、経済界では今なお寿退社の強要や、女子学生に対する就職差別が横行する。女性活躍推進の旗振り役である政府ですら、あたかも女性を「夫に養ってもらうべき存在」として扱う。彼女たちの救いは一体どこにあるのか。苦境に陥った女性たちが一縷(いちる)の望みを託す「救済所」へと向かった。

 本山房枝氏(仮名)はこの日、小学生の娘と2人で電車に乗って東京・大田区にあるビルの一室を訪ねた。スタッフから渡されたポリ袋いっぱいのお米や野菜を確認しながら、「すごく助かる」とうれしそうだ。

フードバンクを運営するNPO法人「グッドネーバーズ・ジャパン」から受け取る食料で多くのひとり親世帯が食べつないでいる
フードバンクを運営するNPO法人「グッドネーバーズ・ジャパン」から受け取る食料で多くのひとり親世帯が食べつないでいる

 アパレルの店員だった本山氏がコロナ禍の影響で失業して久しい。女手一つで一人娘を育てており、世帯の収入はゼロになった。日々の食費にも困っていたところ、ひとり親世帯向けに東京や神奈川、大阪の各地で食料を無料で配布しているNPO法人「グッドネーバーズ・ジャパン」の存在を知った。この日は東京・大田区にあるグッドネーバーズの東京事務局で、事前に申し込みのあった130世帯に配布していた。

 本山氏がグッドネーバーズから食料を受け取るのは今回で4回目となる。「保冷バッグに入ったお魚やお肉もある。こんなの初めてだ」と笑う。

シングルマザーが困窮する訳

 グッドネーバーズ国内事業部の原口祐己部長代理は、「コロナ禍の影響などで利用登録している世帯は5倍に増えた」と言う。

 もともと日本はひとり親世帯の貧困率が極めて高い。経済協力開発機構(OECD)に加盟する主要35カ国の平均32.2%を上回り、48.1%にも達する。35カ国中、日本はワースト2位である(令和3年版「男女共同参画白書」から)。

 ひとり親世帯の9割近くを占めるのが母子家庭だ。シングルマザーは正社員ではなく、パート・アルバイト・派遣社員など非正規労働者として働いていることが多いのが、貧困率の高さの一因となっている。

 シングルマザーに限らず、日本では非正規労働者に占める女性の比率が極めて高い。仕事をしている男性のうち22.2%が非正規労働者なのに対して、女性は54.4%にも上る(令和3年版「男女共同参画白書」から)。ここまで非正規労働者が女性に偏っている国も珍しい。日本は主要7カ国(G7)の中で非正規雇用率(有期雇用率)の男女差が突出しており、隣国の韓国をも圧倒する。

 さらに悪いことに、日本では非正規労働者が家計の唯一の収入源になることを企業が想定していない。家庭を守ることを本分とする妻が、あくまでも家計の補助的な収入を得るために非正規で働いているという位置づけだ。

 家計の主な担い手である正社員の夫に養ってもらっていることを前提に、非正規労働者の賃金を低く設定している。このため夫がいない非正規のシングルマザーは、経済的に苦しむことになる。食料の配布所で出会った本山氏もその一人だ。

 厚生労働省が2016年に実施した最新の「全国ひとり親世帯等調査」によると、シングルマザーの平均年収は200万円にとどまっている。日本の平均年収の半分以下である。

続きを読む 2/3 誰も顧みなかった女性たちの低賃金

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