いまだ同性婚が法的に認められておらず、「LGBT理解増進法案(LGBT法案)」も今年6月に事実上の棚上げとなった日本。LGBTQ+(性的少数者)を含め個性を認めあう社会にするにはどうすればいいのか。多様性や不平等の解消に力を入れるEY Japanの貴田守亮会長兼CEO(最高経営責任者)にLGBTQ+を取り巻く日本の課題、そして今後の家族のあり方について聞いた。
日本では「LGBT法案」が棚上げになり、同性婚も認められていません。日本の制度を含め、LGBTQ+を取り巻く環境についてどういった点に課題を感じていますか。
貴田守亮 会長兼CEO(以下、貴田氏):先進国ではLGBTQ+の権利を認めることはすでに「正しいことだから進めましょう」という認識で進んでいます。ですが、まだ日本では「社員のエンゲージメントや売り上げが上がる」といったビジネスの観点が中心となっています。
日本でも株主だけではなく、社員や社会全体が企業のステークホルダーになり、「誰も置き去りにしない」というSDGs(持続可能な開発目標)の考え方が浸透してきています。ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)の推進について「ビジネスに良いから」という論点を強く出しすぎると、従業員や社会から「利益の為だけの企業活動」と批判の矛先を向けられるリスクが高まります。

94年、カリフォルニア大学音楽部ピアノ課で学士号を取得。96年にカリフォルニア州立大学サンフランシスコ校で経営科学修士号を取得。1996年、EYに入社。米国公認会計士として、米国企業や日系企業の在米子会社・在欧子会社の監査などを担う。2007年にパートナーへ昇格。サンフランシスコ、ロンドンなどでの勤務を経て、2016年に東京に赴任。16年7月からEY Japan Deputy Area Managing Partner、19年7月からEY Japan COO。21年7月より会長兼CEOに就任。(写真=陶山勉)
私は1996年にEYのニューヨークオフィスに入社しました。当時、いまでいうSNS上のコミュニティーで、大手会計事務所の社員同士で悩みを話せる場をインターネット上でつくりました。その結果、LGBTQ+当事者はカミングアウトすると昇進できない、解雇されてしまうといった悩みを抱えていました。
社会的にまだ80年代から引きずっていたエイズウイルス(HIV)感染症はゲイ男性の病気という誤った考えや、気持ち悪い、あるいは宗教的に許容できないなど、同性愛の男性のみに焦点が当てられて、トランスジェンダーやレズビアンへの理解も進んでいませんでした。当時の米国に比べると、今の日本は理解がかなり進んでいると感じています。
ゲイであることをカミングアウトされています。どういったきっかけがあったのでしょうか。
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