ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス(東京・目黒)は社員の多様化に積極的に取り組んでいる企業の一つ。一人ひとりを唯一無二の存在として尊重する企業文化が根付いている。2020年3月には、採用試験の際に提出を求める履歴書から、顔写真、ファーストネーム、性別の欄を削除した。ただ、社内でこの提案があってから実現するまでには1年かかり、簡単なことではなかった。

日用品大手のユニリーバ・ジャパン・ホールディングス(東京・目黒)は、2020年3月6日から採用試験の際、志願者に提出を求める履歴書の性別欄を削除し、顔写真の添付と性別が類推できるファーストネームの記入も不要にした。
取締役人事総務本部長の島田由香氏は「これらの項目は、採用担当者が見ると無意識に志願者の性別や容姿を思い浮かべてしまいがちだ。本来、審査で必要としないこれらへの関心を排除し、重視すべき個性や能力の見極めに集中できるようにするのが目的」と話す。新卒や中途などすべての採用ルートに適用する。

ユニリーバがこうした採用を始めたきっかけは、3年ほど前に遡る。シャンプーなどを展開する自社ブランドであるLUX(ラックス)で、ブランドが掲げる目標の再定義が議題に上がったことだった。
ユニリーバは、各ブランドのパーパス(目的・存在意義)を大切にしている。製品を提供することにより、それを使用する顧客の何を最終的に支援しようとしているのかを明確にしているわけだ。従来、LUXのパーパスは「女性が自分らしく輝くためのサポート」だった。これを時代に合わせて練り直すことになった。
注目したのは、以前のパーパスにあった「輝く」という言葉。思いとは裏腹に、社会では個人が輝く機会が失われているのではないかという疑問が提起された。ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングのラックスブランドマネジャー河田瑶子氏は、社会人生活の入り口である採用活動に目を付けた。そして「ジェンダーが理由で、個人のやりたいことや希望が実現できない現実があるのではないか。LUXとして何かできることはないか」と島田氏に相談した。
LUXが採用担当者や会社経営者など424人を対象に実施したアンケートによると、4人に1人は採用過程で男女が平等に扱われていないと感じていた。そして4割以上が履歴書に貼る写真が合否に影響すると答えた。
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