狙うのは「1+1=5」のイノベーション

21年5月に、「ウーマノミクス」の提唱者であるキャシー松井さんや『ファクトフルネス』の翻訳でも知られる関美和さんとESG(環境・社会・企業統治)重視の投資ファンドのMパワー・パートナーズ・ファンドを立ち上げました。なぜこうしたファンドを立ち上げたのでしょうか。

村上氏:関さんとはビジネススクールが同じ、キャシーさんとはゴールドマン・サックスでの同期です。誕生日会などよく3人で集まっていたのですが、その際のイシュー(論点)はジェンダーダイバシティーが進まないことでした。

 国際的な視点から日本を見ると、教育レベルや技術力が高く、資金もあり、治安もいい。優位性がいろいろあるのに、しっかりと具現化されていないことにもったいなさを感じていました。何が足りず、そして、何ができるか。そのためには、日本で新しい産業や会社を成長させていくような環境をつくることが欠かせない、と。

 キャシーさんは、今のようにESGが話題になる前から、「ウーマノミクス」を提唱し、ESGの要素が企業の成長でいかに意味を持つか、20年、30年前から語っていました。ソーシャルインパクトファンドのようにCSR(企業の社会的責任)的に考える必要はなく、ESGの要素が会社の成長戦略に入ってくる動きは自然に起こるはず。しっかり投資のリターンを狙っていますし、投資した会社の“ESGの旅”に伴走する考えもあります。

 ジェンダーや多様性を重視する投資ファンドは今後も出てくると思いますが、そうした金融機関は男性ばかりかもしれない。(女性の投資家が少ないなど)自分たちができていないことを、投資先を含め他の企業に求めるのは難しいのではないでしょうか。だからこそ、私たちのファンドの強みにもなります。

日本では女性の就業率に加え、LGBTQ+の方を含めた多様性の観点も話題に上がるようになりました。

村上氏:企業が自分たちの会社を強くするという意味では、様々な考えを持ち寄って、1+1を5にまで伸ばすことをイノベーションとして狙いたいはずです。ただ同質性が高い組織で価値観がまったく一緒だったら何も変わりません。女性であったりゲイであったり、化学反応が起こることでイノベーションが生まれやすくなる。マジョリティーと違っていることが、大切なんです。

 私たちのファンドにもゲイのメンバーがいます。テクノロジーの専門的な知識が豊富で様々なアドバイスをくれます。彼には様々な「視点」を教えてもらっています。例えばデータやAI(人工知能)を使ういろいろな会社がありますが、データを使用する際の偏見がないかどうか。私は気づかなかったけれど、彼はデータバイアス(偏り)やデータソースに目を向けてくれていました。

 一般的にテクノロジーの分野では男性が多い。こうした偏見がないのかといった視点を持っている人は日本ではまだ少ないと思います。

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