男女の違いやLGBTQ+(性的少数者)をテーマに追いかける今回の特集。生きづらさや働きづらさが時には機会の不平等や経済的な格差を生み出してきた。初回は、元OECD(経済協力開発機構)の東京センター所長で、日本初のESG(環境・社会・企業統治)投資ファンド「Mパワー・パートナーズ・ファンド」を共同で創設した村上由美子氏に日本の課題、女性活躍推進の問題、そして多様性がなぜ求められるのかを聞く。ジェンダーを巡る日本の立ち位置と課題を整理してみる。

日本のジェンダーギャップ指数は120位と先進国では最低のレベルです。どういった点に課題があるのでしょうか。

村上由美子氏(以下、村上氏):一番の問題は意思決定の場に、女性が参加していないことです。女性活躍推進法により就業率は上がり、日本の女性就業率は米国やOECDの平均よりも高い。(編集部注:2019年の国際労働比較によると、日本は69.6%で米国の65.5%を上回る)ですが、管理職や上層部、取締役はまだまだ女性が少ない状況が続いています。 

 女性活躍推進の本質がまだ理解されておらず、ただ、女性が働けばいいとなってしまっている。これまで会社も政府も、労働力確保の点からの女性活躍推進が軸でした。女性であれ誰であれ、様々なバックグラウンドや生きざま、考え方の人が意思決定のプロセスに関与することが、想定外のアイデアを生み出し、イノベーションが生まれやすい環境を整えることにつながります。これが一番の軸だと思います。

<span class="fontBold">村上由美子[むらかみ・ゆみこ]氏</span><br>上智大学外国語学部卒、スタンフォード大学院修士課程(MA)、ハーバード大学院経営修士課程(MBA)修了。約20年にわたり主にニューヨークで投資銀行業務に就く。ゴールドマン・サックス及びクレディ・スイスのマネージング・ディレクターを経て、2013年にOECD東京センター所長に就任。21年にMパワー・パートナーズ・ファンドを立ち上げた。著書に『武器としての人口減社会』。3人の子を持つ。島根県出身。(写真:陶山勉、以下同)
村上由美子[むらかみ・ゆみこ]氏
上智大学外国語学部卒、スタンフォード大学院修士課程(MA)、ハーバード大学院経営修士課程(MBA)修了。約20年にわたり主にニューヨークで投資銀行業務に就く。ゴールドマン・サックス及びクレディ・スイスのマネージング・ディレクターを経て、2013年にOECD東京センター所長に就任。21年にMパワー・パートナーズ・ファンドを立ち上げた。著書に『武器としての人口減社会』。3人の子を持つ。島根県出身。(写真:陶山勉、以下同)

村上さん自身は女性のリーダー層に当たりますが、バリバリ働いて3人の子供を育てるというのは、相当大変なのではないでしょうか。

村上氏:うちはすごく放任です。死ななきゃいいと思っているので、何とかやっている感じです(笑)。でも、やろうと思ったらできる。

 私がラッキーだったのは、大学院を卒業して入社したゴールドマン・サックスの上司が女性だったことです。その上司は既に結婚しており、1人目の赤ちゃんを妊娠し、休みを取って仕事に復帰。2人目が生まれた時も産休を取って復帰し、バリバリ働いていました。

 そのとき、私は独身でしたが、目の前の上司を見ていたから、仕事に復帰して子供を育てることは私にもできると思いました。私は3人産みましたけど、やる前から「できなかったらどうしよう」という悩みはありませんでした。

 ただ、日本の女性は家庭を持ちながらの「バリキャリ」の女性を見ていないから心配にもなる。男性化した女性が求められるような会社もあると聞きますし、男性の3倍働いていないと上のポジションに行けないのだと思うと、若い女性はひるみますよね。石橋をがんがんたたいて、たたきまくって、自分で川を渡れなくしているんじゃないか、と思います。

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