2021年も6月の株主総会が終わり、上場企業各社の新役員体制が出そろった。今年度のキーワードは女性登用といえる。

 金融庁と東京証券取引所が6月11日、上場企業の経営に関するルールをまとめたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改訂版を施行し、“多様性確保”をその柱に据えたからだ。

 新ルールにいち早く対応し、女性取締役を誕生させた企業はどこか。そこで日経xwoman編集部では、東証1部上場企業2191社の時価総額ランキング上位300社を対象に、女性取締役の人数や個人名を調査した。女性取締役比率、5年前(2016年)との比較、株価や業績との関連などを分析しランキング形式で発表する。

 最終回となる今回は、女性取締役を増やすことが、企業にとって実益があるのかについて考察する。

 企業に多様性の確保を要求するコーポレートガバナンス・コード改訂などの影響により、女性取締役の増加傾向が見え始めた日本企業。とはいえ、現状では、時価総額上位300社という「とびきりの大企業」であっても、米国や欧州と比べて極めて低い水準にとどまっている。

 企業が永続的な成長を目指す存在であり、適正な利益の確保が欠かせない。女性活用の推進というと、ルールや社会的圧力といった側面に目を奪われがちだが、そもそも企業にとってメリットがあるのだろうか。

 結論としては、企業に実利的なメリットが「ある」といえる。

 下記は、株価指数などの分析を手がける米MSCIが産出した女性活躍が進んだ企業で構成される「MSCI日本株 女性活躍指数」と、女性活躍度を加味しない「MSCI日本株指数」を比べたグラフだ。10年前の2011年7月末を起点とすると、2つの指数は当初はほぼ同じ動きだが、15年前後から一貫して女性活躍指数が上回るようになる。

「女性活躍度の高い企業」は株価パフォーマンスが高い
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2011年7月末を1として累積パフォーマンスを比較。智剣・Oskarグループの大川智宏・主席ストラテジストのリポートより編集部作成
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