社外取として最多の4社を掛け持ちする、“横綱”級の人気者は3人。クリスティーナ・アメージャン氏、秋山咲恵氏、小林いずみ氏だ。アメージャン氏は、一橋大学大学院商学研究科教授で、比較コーポレートガバナンスやグローバリゼーションなどを研究テーマとしている。秋山氏は、産業用機器製造業のサキコーポレーションを創業した実業家。そして小林氏は、メリルリンチ日本証券社長の経歴を持つ実業家である。

 続いて、3社を掛け持ちする“大関”級は2人。岩田喜美枝氏は、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長まで務めた元官僚。もう1人の幸田真音氏は、米国系金融機関の債券ディーラーのキャリアを持つ経済小説家だ。テレビの情報番組のコメンテーターとしても活躍している。

東証1部上場企業の時価総額上位300社のうち、三井物産やみずほフィナンシャルグループなど4社の社外取を掛け持ちする小林いずみ氏(写真右)と、JTや三菱自動車など3社を掛け持ちする幸田真音氏(写真左)(写真=小林氏:時事、幸田氏:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
東証1部上場企業の時価総額上位300社のうち、三井物産やみずほフィナンシャルグループなど4社の社外取を掛け持ちする小林いずみ氏(写真右)と、JTや三菱自動車など3社を掛け持ちする幸田真音氏(写真左)(写真=小林氏:時事、幸田氏:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

宇宙飛行士、キャスター、スポーツ選手・・・各界の著名人が並ぶ

 2社を掛け持ちする人は51人。中には、日本人女性初の宇宙飛行士である向井千秋氏(富士通、花王)や、元NHK「ニュース21」キャスターの福島敦子氏(ヒューリック、名古屋鉄道)、1984年ロサンゼルスオリンピックバレーボール全日本代表選手の三屋裕子氏(ENEOSホールディングス、デンソー)の名前もある。女性社外取には、このほかにも文化人、アナウンサー、元スポーツ選手など、テレビでなじみの著名人が多い。

 社外取は言うまでもなく、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る観点から、経営を監督することが重要な役割である。一概に、著名人が不適格というわけではない。しかし、知名度の高さに目を奪われて女性社外取を安易に任せる企業は、女性登用についての見識を株主や投資家、取引先といったステークホルダー(利害関係者)から疑われかねないことを、肝に銘じておくべきだろう。

次ページ 7割以上の企業で女性取締役比率が上昇