2021年も6月の株主総会が終わり、上場企業各社の新役員体制が出そろった。今年度のキーワードは女性登用といえる。

 金融庁と東京証券取引所が6月11日、上場企業の経営に関するルールをまとめたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改訂版を施行し、“多様性確保”をその柱に据えたからだ。

 新ルールにいち早く対応し、女性取締役を誕生させた企業はどこか。そこで日経xwoman編集部では、東証1部上場企業2191社の時価総額ランキング上位300社を対象に、女性取締役の人数や個人名を調査した。女性取締役比率、5年前(2016年)との比較、株価や業績との関連などを分析しランキング形式で発表する。

 今回は「女性取締役比率ランキング」を公開する。ESG投資や就職・転職先の見極めに活用してほしい。

 東証1部の上場企業で、時価総額上位300社の取締役は、現在合計で3115人いる。そのうち、女性は何人かご存じだろうか? 答えは394人。この数を多いと感じるか、少ないと感じるかであなたの「ダイバーシティー理解度」を計ることができる。

 394人は、全取締役のうち12.6%という数値。世界を見回すと取締役における女性比率は、米国や欧州では軒並み30~40%というレベルだから、10%台ではダイバーシティー経営においては明らかな劣等生だ。

 この現実に警鐘を鳴らし、新ルールを作ったのが金融庁と東京証券取引所だ。今年6月にコーポレートガバナンス・コードを改訂し、取締役や中核人材に多様性を確保せよと強く推奨している。多様性の中でも特に女性登用を催促した。催促にとどまらず、目標値・現状・人材育成の環境なども開示することを上場企業に強く求め始めたのだ。米国では上場廃止や投資先から外すなどのペナルティーも科しており、日本もそれに倣う形で投資環境を整備している。

 来春の新市場区分スタートに向けて機関投資家に組織の健全度をアピールできるか、それとも投資対象外となるか。今や重要指標の一つとなった女性登用について、日経xwoman編集部の独自調査で分かった上位ランキングを見ていこう。

女性取締役比率は1位がローソン、2位が資生堂で35%超え

女性取締役比率ランキング
ランキング順位(同率の企業は時価総額順) 社名 女性取締役合計人数(うち、社内取締役はカッコ内) 取締役合計人数 取締役における女性比率
1 ローソン 3(0)人 7人 42.9%
2 資生堂 3(1)人 8人 37.5%
3 ソニーグループ 4(0)人 11人 36.4%
4 東京ガス 3(0)人 9人 33.3%
伊藤忠テクノソリューションズ 2(0)人 6人 33.3%
千葉銀行 3(1)人 9人 33.3%
FOOD & LIFE COMPANIES 3(0)人 9人 33.3%
スギホールディングス 2(0)人 6人 33.3%
丸井グループ 2(1)人 6人 33.3%
10 積水ハウス 3(0)人 10人 30%
コーセー 3(0)人 10人 30%
LIXIL 3(1)人 10人 30%
荏原 3(0)人 10人 30%
14 MonotaRO 2(0)人 7人 28.6%
大和証券グループ本社 4(2)人 14人 28.6%
16 味の素 3(1)人 11人 27.3%
ニチレイ 3(0)人 11人 27.3%
18 三菱UFJフィナンシャル・グループ 4(0)人 16人 25%
ゆうちょ銀行 3(1)人 12人 25%
東日本旅客鉄道(JR東日本) 3(1)人 12人 25%
東芝 2(0)人 8人 25%
野村ホールディングス 3(0)人 12人 25%
SOMPOホールディングス 3(0)人 12人 25%
明治ホールディングス 2(0)人 8人 25%
ウエルシアホールディングス 2(0)人 8人 25%
ポーラ・オルビスホールディングス 2(0)人 8人 25%
オープンハウス 2(0)人 8人 25%
日本新薬 3(1)人 12人 25%
栗田工業 2(0)人 8人 25%
ベネフィット・ワン 2(2)人 8人 25%
アシックス 2(0)人 8人 25%
双日 2(0)人 8人 25%
日経xwoman編集部の独自調査による女性取締役比率ランキング上位32社。1位はローソン、2位は資生堂、3位はソニーグループで、25%以上の企業は合計32社だった。
調査概要

「女性取締役ランキング2021」上場企業300社調査

 日経xwoman編集部では、東証1部上場企業2191社の時価総額ランキング上位300社を対象に、2021年7月6日時点での女性取締役(社内・社外含む。監査役は除く)の人数や個人名、就任日などを調査した。2021年7月6日時点で、有価証券報告書と各社ホームページで公開されている取締役の状況を参照し、最新のデータを使用した。また、過去との比較においては5年前の2016年を取り上げた。企業によっては決算日の都合上、最新のデータが2020年時点の場合もある。その場合は5年前の2015年時点の有価証券報告書掲載のデータを記載した。なお同率順位の場合、企業の表示順は時価総額の高い企業から表記している。

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 1位はローソンで42.9%。7人中3人が女性取締役で、全員が社外取締役だ。2位は資生堂で37.5%。8人中3人の女性取締役がおり、そのうち1人は代表取締役常務として、鈴木ゆかり氏が2021年1月に就任した。続く3位はソニーグループで36.4%。取締役が合計11人と多いが女性取締役も多く、4人という布陣だ。しかし、その4人全員が社外取締役で、社内人材から昇格した、いわゆる“生え抜き”はいない。

女性取締役比率ランキング2位の資生堂では、鈴木ゆかり氏が代表取締役常務を務める(写真=稲垣 純也)
女性取締役比率ランキング2位の資生堂では、鈴木ゆかり氏が代表取締役常務を務める(写真=稲垣 純也)

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