1890年に東京で誕生してから133年。「恵比寿」という駅名や街の名前の由来となったのが「ヱビスビール」だ。サッポロビールの旗艦商品「黒ラベル」と並ぶ人気ブランドである。プレミアムビールのカテゴリーで独自の文化を築いており、単一ブランドで多彩な商品ラインアップを展開している。ビール愛好家なら誰もが知る人気商品ではあるが、直面している課題もある。2023年から新たに立ち上げたヱビスブランドの新ラインも含め、今後の戦略をヱビスブランドブランドマネージャー沖井尊子氏に聞いた。

サッポロビールマーケティング本部ビール&RTD事業部ヱビスブランドブランドマネージャー沖井尊子氏
サッポロビールマーケティング本部ビール&RTD事業部ヱビスブランドブランドマネージャー沖井尊子氏

ヱビスブランドはどのような存在ですか。

沖井尊子氏(以下、沖井氏):133年という長い歴史がある特別なブランドです。多彩な商品ラインアップを有し、黒ラベルとは違ったタッチポイントを持っています。企画や開発の考え方、こだわりも黒ラベルとは異なります。

 味の特徴は、「コクと味わいの豊かさ」です。これはプレミアムビールに求められることで、ヱビスブランドが長い時間をかけて磨いてきた部分です。

ヱビスは一般的なビールより価格が高い「プレミアムビール」のカテゴリーに入りますが、市場ではどう受け入れられていますか。

沖井氏:2021年に改めてヱビスブランドを再定義しました。その際、「お客様の時間に彩りを添えるブランドになっていこう」と考え、「Color Your Time!」という新コンセプトを掲げました。これまでも様々なブランド戦略を試してきたのですが、「ちょっとぜいたくなビール」「ハレの日に飲むビール」というイメージから抜け出せませんでした。

 「特別な日」に飲んでいただくお客様が多いことはとてもうれしいのですが、それだと「年に1~2回だけ飲む」という人ばかりになります。実際、そういうお客様が多いのが現実です。ですが、私たちは「もっとたくさんの日々を、ヱビスと一緒に過ごしてもらいたい」と願っています。日常的にヱビスを選んでいただければ、豊かに過ごせる時間がもっと増えると思っているからです。

 今はまだ、私たちの思いをお客様に伝え切れていません。だからこそ、ブランドの再定義をし、これまでとは違った形での情報発信にも努めています。

新型コロナウイルス禍で「宅飲み需要」が広がり、ビール業界にも変化が起きています。

沖井氏:世の中は少しずつ変わってきていて、以前は「プレミアムビール」といってもヱビスより高いビールはそれほどありませんでした。ですが今は、プレミアムカテゴリーの競合商品も増えてきました。さらに高額なクラフトビールも人気を博しています。こうした市況でヱビスはどのような存在であればいいのか、考え直すべきタイミングにありました。

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