今、商品やサービスのヒットが長続きしないといわれる。見直されているのが、特定の会社を支持し、商品を買い続けるファンの存在だ。日経ビジネスでは、あるブランドをどれだけ友人や同僚に薦めたいかを示すNPS(顧客推奨度)の尺度を使い、携帯電話サービスやコンビニエンスストア、テーマパークなど10分野について、消費者1万人に調査した。特集では判明したランキングを掲載、企業のファンづくりの取り組みを紹介する。

 NPSは「この商品・サービスを友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」と問い、「全く薦めない」の0点から「強く薦める」の10点まで11段階の点数を選んでもらう。NPSとはネット・プロモーター・スコアの頭文字で、「他人に薦めるか」と尋ねることで、「顧客満足度」に比べてより高いロイヤルティー(信頼や愛着)を測れるのがNPSの特徴だ。

 9~10はロイヤルティーが高い「推奨者」と規定。7~8は、不満はないが競合に流れる可能性がある「中立者」、0~6は不満がありマイナスの情報を発信するかもしれない「批判者」に分類する。全体に占める「推奨者」の割合から「批判者」の割合を差し引いたものがNPSスコアとなる。日経ビジネスは2021年12月、調査会社マクロミルにインターネットを通じて調査を依頼した。過去1年間に利用経験のある商品・サービスが対象だ(四捨五入で数字が合わない場合がある)。

 消費者が自由にネット上で情報を入手できるデジタル化が進んでおり、商品・サービスを乗り換えやすい時代になった。人口が大幅に減少していくこともあり、既存顧客のつなぎ留めは経営の根幹に関わる。少ない数のファンが多くの売り上げをもたらす事業は多いとされ、今、世界で多くの企業が新たなマーケティング指標としてNPSに注目し始めている。今回は10分野それぞれの上位3社を掲載し、22年1月中旬から詳しい順位や企業の具体的なファンづくりの事例を取り上げる。

【ネット編】携帯トップはLINEに

 首位になった「LINEモバイル・LINEMO」は、対話アプリのLINE上から申し込みができ、LINEのメッセージや音声通話ではデータ容量が消費されないのが特徴で、ユーザーの支持を集めている。携帯電話市場のシェアで首位のNTTドコモは上位3社に入らなかった。

 首位は登録ユーザー数が4200万(21年9月時点)と業界トップの「PayPay」。利用できる加盟店数が344万カ所に達し、大手チェーンから個人経営の店まで幅広い業態で使える利便性の高さが評価された。「楽天ペイ」は楽天経済圏のユーザーに支持されている。

 企業から消費者への「BtoC」ビジネスに取り組むECサイトでは、「ヨドバシ・ドット・コム」が首位。東京23区などで、自社の配達員が最短即日で配達する。スピードや正確さを兼ね備えたストレスの少ないサービスを提供できていることが順位に表れている。「SHOPLIST」や「&mall」はファッションやインテリアに特化したサイトづくりが推奨度を高めている。

 豊富な資金力でコンテンツ制作や料金の安さを武器にする海外勢に、アニメを専門とする「dアニメストア」が食い込んだ。「ネットフリックス」は毎年1兆円以上を投じてオリジナルコンテンツを制作し、ファンが増えている。dアニメストアは国内最大級とされる4400作品以上のアニメが見放題だ。「アマゾン・プライム・ビデオ」は、月額500円(税込み)または年会費4900円(同)を払って有料会員になれば利用でき、安価な点が評価されている。

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