UCCホールディングス(HD)の代表的商品に缶コーヒー「BLACK無糖」がある。2021年はそのブランドの一商品であった水出しペットボトルコーヒー「COLD BREW」を刷新、顧客を女性や若年層に広げることに成功した。ライオンや資生堂などで活躍してきた杉山繁和執行役員CMO(最高マーケティング責任者)はどんな目線でリニューアルしたのか、マーケティングの考え方を聞いた。

1987年早稲田大学教育学部卒。ライオンや日本コカ・コーラなどを経て2009年資生堂入社。17年資生堂ジャパン執行役員社長。21年から現職。
複数の企業を渡り歩く中で、マーケターとして影響を受けたのはどこで働いたときのどんな仕事だったのでしょうか。
杉山繁和UCCHD執行役員CMO(以下、杉山氏):マーケティングという意味で強く影響を受けたのは、最初に勤めたライオンです。奇をてらった手法があるわけではなく、消費者、生活者というか、ユーザーがどういう意図で何をどう欲しているのかをできるだけ把握するという、当たり前のことを当たり前にやっていました。
本当の意味での真実というのはユーザー本人にしか分からないので、そこは想像力を働かせながら、いろいろなものを創造していくというベーシックな活動でしたね。
具体的には、誰が何をいつなぜ、どれくらいの量をどれくらいの頻度で使うのか。それをいくらでどこでどれくらいの頻度で購入するのかという定量調査をしながら、あとは実際に使われている方が、どこにどういう価値を見いだしてそれを購入しているのか。なぜそれを繰り返し使うのかといった定性調査を、1on1のインタビューやグループインタビューなどで探っていました。
そこで得られたユーザーの反応をどうマーケティングに生かしていたのでしょうか。
杉山氏:100%の人にご満足いただくのは無理なので、どの価値をどのブランドで提供するかというブランドごとの提供価値をしっかり定義する必要があります。欲張らずユーザーと長く付き合えるように、提供するものと求められているものの価値をうまくマッチングさせていく点が大事だったかなと思います。

そうした視点は、経験を重ねることで自然と身につくのでしょうか。
杉山氏:経験もありますが、やはりちゃんと学ぶことが大事です。マーケターにも自分のやりたいことはあるわけですよね。それを社内で説得するためだけにデータを集めたり、ストーリーを作ったりしても、最終的に商品を選ぶのはお客様なので、そこは無理が生じます。
だから、自分の考えと消費者の事実が本当にマッチしているかという意味で、まず事実をしっかり認識することはとても大事です。
その上で「こういうものが欲しいのでは」と想像力を働かせてコンセプトを考え、商品を提供していく。その繰り返しだった気がします。なので、経験というよりも、そうした繰り返しを飽きずにできる持久力や胆力の方が求められるんじゃないかと思いますね。
消費者のニーズが多様化してきているといわれますが、どのように感じていますか。
杉山氏:多様化しているというよりも、欲しいものがあまり明確じゃない気がするんですよね。
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