「相手のことを思うのが愛なら、コンドームを着けることは愛」――。コンドーム国内トップのオカモトが独創的なマーケティングを繰り出している。その歴史は消費者が抱く羞恥心との果てしなき戦いだ。そもそもあまりメディアに登場しないオカモトとはどんな会社なのか? 日陰の存在だった製品にどう光を当てたのか?原点はお世話になったおじさん世代も多いであろう、あの商品だ。
巨大な水槽にはピンクやブルーのネオンが色めき、カラフルな海洋生物のイラストを描いたパネルが暗闇に浮かび上がる。カップルや若い女性のグループが興味津々で館内を見回る中、男1人でやってきた記者はどこか落ち着かない。

ここは東京・池袋のサンシャイン水族館。開かれていたのは午後6:15からという夜限定の「性いっぱい展おかわり♡」だ。なかなか知ることのできない生き物の性と繁殖を解説する特別企画なのだが、本題はこれではない。
展示の最終コーナーにあるお土産品売り場。「あったー! ツイッターで見たのこれだよ」。男女のグループが騒ぎながら手に取ったのはコンドーム。黒のパッケージに、カラフルなイラストで魚の特殊な交尾の様子がかわいく描かれている。20代の社会人カップルは「性を楽しく学べた記念に買って帰ろうと思った。友達にもお土産を頼まれている」と2つ購入。その後も、若い男女らが次々と買い求めていった。コンドームを納めたのはオカモトだ。

創業は戦前
イベントが始まった9月半ばからすでに1000セット(6個1セットで税込み1000円)を売り上げた。2020年の前回は10日目にして完売し、追加生産するほどの人気に。終わってみれば想定の6倍を売り上げた。21年も水族館とコンドームメーカーという異色のコラボレーションがSNS(交流サイト)上でも話題となり、販促効果を発揮している。
「一体、オカモトってどんな会社なんだろう」。記者は前々から年産約3億個と国内シェア5割(日経ビジネス推計)を誇るオカモトという会社に興味を持っていたが、なかなか取材するチャンスに恵まれなかった。今回も「経営や生産についてはほとんどお話しできません」と一度は断られた。だが、どうしてもその実像に迫りたいと食い下がると、「マーケティングや商品に関する取材なら」と快諾をいただいた。
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