経営難に陥っていた創業154年の老舗酒蔵、金井酒造店(神奈川県秦野市)。M&A(合併・買収)により、DX(デジタルトランスフォーメーション)を中心とした数々の改革を重ねて約1年、売り上げは回復し、復活の兆しを見せている。M&Aに至った経緯と具体的な改革を紹介する。

  「『忙しくなった!』と社員からうれしい悲鳴が上がっている」と笑顔で語るのは、日本酒の製造・販売を手掛ける金井酒造店(神奈川県秦野市)の6代目蔵元、佐野博之社長だ。

 本格的なDXを開始してから約1年。売り上げは伸び、労務環境も大きく改善した。EC(電子商取引)サイトも開設し、慣れない配送業務も増えて社員は多忙になったが、職場は活気に満ちている。

 たった1年ほど前までは、売り上げの低迷が深刻で事業の継続すらも危ぶまれる状況に陥っていたが、今は復活の兆しが見えている。一体、何があったのか。

飲食店需要が激減し、追い打ちをかける

金井酒造店の佐野博之社長(写真:陶山 勉)
金井酒造店の佐野博之社長(写真:陶山 勉)

 金井酒造店は創業154年、神奈川県秦野市にある酒蔵として地元で愛され続けてきた。主力商品は名水で知られる丹沢山系伏流水を使った「白笹鼓(しらささつづみ)」。白笹鼓の特別純米は、米のもつ芳醇(ほうじゅん)な香りとうま味が存分に感じられると人気だ。

 だが、佐野社長は専務時代からずっと、自社の厳しい経営状況を目の当たりにしてきた。2019年に社長になり、経営の改善に本腰を入れるが、飲酒人口の減少による売り上げの低迷、冬場の仕込み作業における労働負荷、従業員の高齢化といった課題が山積みで、対応しきれずにいた。そこへ新型コロナウイルス禍が追い打ちをかけた。

 同社の売り上げを支えてきた、居酒屋、ホテル、旅館、ホールなどの需要は「ほぼ消滅」(佐野社長)。スーパーなどの小売店を通した売り上げは伸びたものの、新型コロナの影響は甚大で、次第に追い込まれていった。

 悩んだ佐野社長は、自力での復活は厳しいと考えた。現状を解決する手段としてM&Aを検討し始めたのだ。M&Aの相手を探すためにマッチングサイト「M&Aサクシード」を利用。そこでDXを用いて中小企業の成長を支援する投資ファンド、くじらキャピタル(東京・港)と出合う。

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