国内のテレビ市場で今、異変が起きている。

 家電量販店などの販売データを集計する調査会社BCN(東京・千代田)によると、2004年10月の集計開始以来、16年あまりの間、テレビ全体の販売台数シェアでシャープが首位を独走してきた。ところが、21年7月、ソニーがトップに立った。

 7月のソニーのシェアは21.5%で、シャープは20.1%だった。9月には東芝のテレビ事業を引き継いだTVS REGZA(青森県三沢市)がトップを取るなど、三つどもえの戦いになっている。

ソニーのテレビ「BRAVIA」の最新モデル「BRAVIA XR」
ソニーのテレビ「BRAVIA」の最新モデル「BRAVIA XR」

 ソニーはかつて会社全体の復活を目指す中で、赤字続きのテレビ事業を再生することがテーマになっていた。平井一夫前社長は販売台数を追うことをやめ、大型の高付加価値商品に特化する決断を下した。12年3月期以降に損益を急激に改善させ、15年3月期に黒字転換した。

 BCNのシェアをたどると、ソニーは12~13年を底にして、徐々に上昇している。背景に何があったのか。

 ソニーが上昇した要因の一つに、消費者が求める画面の大型化を進めたことが挙げられる。BCNによると現在、市場全体では50型以上の大型モデルが販売台数の36.0%を占める。ソニーの主力はまだ40型台だが、50型台が販売台数の3割、60型台が15%と大型サイズの構成比が高い。20型台未満の小型サイズからは撤退し、大型テレビに特化したことがニーズを捉えた。

10年に1回の出会い

 シェアが上昇してきた要因として、売り方を地道に変えている点も見逃せない。販売を担当するソニーマーケティングのディスプレイMK課・福田耕平統括課長は「販売の現場で顧客と会えるのは10年に1回」と話す。それだけ貴重な接点をどう生かすのか――。

 「今、何インチのテレビをお使いですか」。テレビを買いに来た客に声をかける際の定番フレーズだ。現在の画面サイズを聞いたうえで、それより大きなサイズの商品を売り込む。しかし、今が30型台なら大抵は40型台へのサイズアップにとどまる。これでは至上命令である50型以上の大型テレビの販売にはつながらない。