「それはまだ、流行(はや)っていない」
これは、サントリーが新しいブームを生み出そうと狙っているジン「翠(SUI)」のキャッチコピーだ。発売時期は新型コロナウイルスがまん延し始めた2020年3月というタイミングだったが、緊急事態宣言が解除され、これからブーム創出を目指す動きが加速する。

その原動力は、泥臭いまでにマーケティング・チャネル(販路)を築いていく現場の力だ。
JR横浜駅東口から歩いて10分、京浜東北線沿いの少し奥まった場所に居酒屋「○(まる)う商店」がある。三浦半島で取れた魚介や野菜の提供に特徴がある。店内を照らす青緑色のちょうちんには「翠」の文字が浮かぶ。
同店を運営するたのし屋本舗(神奈川県横須賀市)の営業本部長、杉原昌和氏は「サントリーのものづくりを信頼している。ジンに合う料理も開発して翠の普及に協力したい」と話す。

杉原氏はサントリーの営業の熱心さにほれたという。新型コロナウイルス禍で苦戦する中で、サントリーの酒を料理酒として使ったメニューを開発するなど二人三脚で苦境を突破しようとしてきた。
さらに杉原氏は「ビール一つにしてもグラスの洗い方から適温の管理まで、味わってもらうことに強い愛着を持っていた。店側の思いもくみ取ってくれるので、一緒に“戦える”仲間だと感じた」と話す。同店、3年前まで別のビール会社と取引していた。
サントリーの「マーケティング3原則」
サントリーは00年代後半、ウイスキーをソーダで割る「ハイボール」のブームを生み出した。これによって同社のウイスキー「角瓶」は飛ぶように売れたが、変わったのは同社の業績だけではない。ハイボールは店から家庭へ広がり、家でもウイスキーを飲むという暮らしの楽しみを提供することになった。
その「角ハイボール」をはやらせたサントリースピリッツの神田秀樹社長は「マーケティングの勝ち筋には原則がある」と説く。それが、
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