現在、15~24歳のZ世代は「コスパ重視」「無駄な買い物をしない」と捉えられがちな世代であるが、自分の「推し」には消費を惜しまないようだ。ドコモ・インサイトマーケティングが提供する人流データで浮上したZ世代が集まる人気スポット「渋谷区道玄坂」を訪れると、かつてギャルファッションの聖地だったSHIBUYA109(渋谷109)は「推し活の聖地」に生まれ変わっていた。Z世代の心を捉える「推し活」をビジネスチャンスに生かす渋谷109の取り組みからは、Z世代攻略のヒントが見えてくる。
今回、本誌はドコモ・インサイトマーケティングの協力を得て、NTTドコモの携帯電話利用者のインターネット接続情報を基に集計した人流データ「モバイル空間統計」を活用し、現在、15~24歳のZ世代が東京のどのエリアに集まっているか調査した。東京都内を500m四方のエリアに区切り、各エリアのZ世代人口を集計し、ランキング化したものが下表である。調査を実施したのは2019~22年の各年のゴールデンウイーク期間中で、土日祝日の午後2~3時の平均値を用いた。
注目すべきは、新型コロナウイルス禍の20年、21年ともに「渋谷区道玄坂」が首位であることだ。20年5月は緊急事態宣言中であるため6位と順位を落とすも、19年は2位と、同スポットはコロナ禍前からZ世代が集まる傾向がある。このエリアには、言わずとしれた渋谷のランドマーク、SHIBUYA109(渋谷109)がある。
いつの時代も、消費の中心を担うのは若者といわれるが、「失われた10年」と呼ばれた90年代後半以降に生まれたZ世代は、経済不況の中で育ったこともあり、貯蓄や節約に高い関心を持つ。商品購入などの消費行動においても、事前にSNSなどを活用して情報収集するなど、慎重派ともいわれている。「無駄な買い物をしない」「コスパ重視」のZ世代は、何を目当てに渋谷109を訪れるのだろうか。
1979年に「ファッションコミュニティー109」という名称で開業した渋谷109の歴史を振り返ると、流行の発信地として大きな役割を果たしてきたことがうかがえる。とりわけ95年にターゲットを女子高校生に絞り、6年かけてフロアごとの改装を実施しリニューアルすると「ギャルの聖地」として、若者に絶大な影響力を及ぼす存在となった。同店から生まれた「カリスマ店員」は社会現象に発展。「マウジー(MOUSSY)」「セシルマクビー(CECIL McBEE)」など、ここから生まれたブランドが全国的に有名になるケースも相次いだ。
2009年には入館者数が過去最大の年間900万人を記録。しかしその後は右肩下がりの状態が続いた。売上高も08年度をピークに落ち込んでいた。強みとしていたファッションが、アパレルの供給過多やオーバーストアで立ち行かなくなった。海外ファストファッションの台頭や、衣類のインターネット通販の浸透といった、アパレルを取り巻く事業環境の変化も逆風となった。
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