ネギ畑の損失を防ぐ

 同社を創業以来支えてきた企業向けサービスでも、個人向けと競い合うように細分化の戦略が進む。2020年から、従来のような大口の「ビッグB(ビジネス)」だけでなく、中小企業を中心とした「スモールB」も対象とする事業を始めた。

 その一つが、ピンポイントで気温や雨量、風速、風向、照度などを1分ごとに観測できる小型軽量センサー「ソラテナ」の提供サービスだ。

 京都府南部の木津川市で、九条ネギを生産する社員10人ほどのあぐり翔之屋も利用している。例えば、温度管理のためにネギを覆うビニール製カバーは経験上、風速8m以上で飛ばされることが多い。観測データは従業員のスマートフォンで見ることができるため、畑から離れているときでも風速をチェックし、8mを超えそうな場合には畑に戻って処置をするなど対応すれば、損失を防げる。購入プランの費用は機器が19万8000円、毎月のサービス料は8000円だ。

あぐり翔之屋は畑の気象状況を監視することにウェザーニューズのセンサー「ソラテナ」を利用
あぐり翔之屋は畑の気象状況を監視することにウェザーニューズのセンサー「ソラテナ」を利用

 ウェザーニューズで30年近く前に立ち上がった「流通気象サービス」は、気象と販売のデータから需要を予測して適切な発注に役立てるといったもので、現在は大手コンビニエンスストアなどで活用されている。だが、ウェザーニューズの社員を相手先の企業に常駐させてシステムを構築したり、動向を常時監視したりするため、顧客企業のコストはどうしても大きくなる。

運用を顧客企業に任せる

 スモールB事業でウェザーニューズが担うのはデータや関連機器の提供、もしくは予測モデルの提供ぐらいまでで、運用は顧客企業に任せる。そのほうが相手にとってはコストが軽くなり、気象データを利用しやすくなるだろうと踏んでいる。

 スモールB事業の源流は、防虫剤「ムシューダ」のエステー(東京・新宿)と10年以上前から取り組むビジネスにあった。

 衣替えによる需要を予測できるように、ウェザーニューズの気象情報とエステーの販売実績などからモデルを作った。これをエステーの営業担当者が使い、新規開拓などに生かす。ウェザーニューズが行うのはモデル作りまでで、運用するのはエステー。このパターンを大胆に推し進めたのがスモールB事業だ。

 ウェザーニューズが取引先に深く関与しない手法は、従来の企業向けサービスの在り方からすれば思い切っている。ただ、手付かずだった領域にこそビッグデータを生かす余地がある。石橋知博取締役常務執行役員は「気象データはまだまだ活用してもらうことができる」と話す。

石橋氏は気象データを生かす余地はまだ大きく、需要を掘り起こせると語る(撮影:吉成大輔)
石橋氏は気象データを生かす余地はまだ大きく、需要を掘り起こせると語る(撮影:吉成大輔)

 連結営業利益は新たな気象システムの開発などの投資が増えて17年5月期から下落していたが、復調傾向にある。スモールB事業は収益性も高いとみて、強化していく方針だ。

 顧客のニーズを見定め、サービス利用者など社内外のデータを分析し、今までになかったコンテンツをスピーディーに形にする──。うまく流れているウェザーニューズの事業に落とし穴があるとすれば、この循環を切らしてしまうこと。誰もやっていないことをやれ、と挑戦を促してきた草開社長にとって目配りの欠かせない仕事となる。

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