今では三浦半島の観光の“顔”にもなっている乗馬。地元に馬と海水浴するユニークなサービスを根付かせたのは、乗馬クラブ「ホーストレッキングファーム三浦海岸」だ。三浦海岸の景色を変えた2人の社長とは――。

 「ヤァ、ヤァ、ヤァ!!!」

 8月中旬、三浦海岸に馬を駆る声が響き渡った。曇天とは裏腹に、馬に乗る女性らは楽しそうにはしゃぐ。だがその光景には若干の“違和感”がある。

馬はすごいスピードで海の中を駆ける(写真=的野弘路)
馬はすごいスピードで海の中を駆ける(写真=的野弘路)

 女性たちが馬を走らせていたのは海岸ではなく、海の中だ。乗馬クラブのホーストレッキングファーム三浦海岸(神奈川県三浦市)では、馬と海水浴ができる「海馬(うみうま)コース」を提供する。2009年に始まり、毎年ほぼ満員となる大人気のコースとなった。

 海の中とはいえ、走ると結構スピードが出る。水中を走る馬のしっぽにつかまり、ウオータースライダーのように楽しめる「しっぽサーフィン」や水中にたたずむ馬の上からのダイブなど、しっかりと調教された馬たちとの触れ合い方は、他の乗馬クラブとは一味違う。この日初めて海馬コースを体験した女子大学生(21)は、海上で馬の背中に寝そべると「馬の温かさでずっと寝ていられそう」とリラックスした表情を浮かべた。

馬からダイブする様子も楽しそうだ(写真=的野弘路)
馬からダイブする様子も楽しそうだ(写真=的野弘路)

 乗馬クラブと海岸との往復の様子も、見慣れない人は驚くかもしれない。徒歩15分ほどの距離を、人を乗せた4頭の馬がきちんと隊列を組み、その後ろを馬のボロ(馬ふん)を回収するためのバギーがゆっくりとついていく。

海岸に向かう一行(写真=的野弘路)
海岸に向かう一行(写真=的野弘路)

 クラブのメンバーが挨拶すると、地元の人は「よう」と声をかけ、手を振る女性もいる。馬たちはおとなしく、京浜急行電鉄の三浦海岸駅の高架下の通過や海岸付近のセブンイレブンの前での信号待ちも、慣れたものだ。

 主婦の村山玲子さん(58)は、去年初めて参加したリピーター。同クラブに時々訪れる娘の愛実さん(19)と一緒に参加した。「しっぽサーフィンは結構、力がいるけど、スピードが出て面白いんです」と話す。

 あるスタッフは「米国から来た馬の調教師も『こんなに馬といろいろな遊び方ができる場所は初めて』と興奮していた」と話す。

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