全店が同じメニューで同じ価格、同じオペレーション――。これが、外食や物販を問わずチェーン店経営の常識だ。全国どこでも「同じ看板、同じサービス」を提供することで効率化を図り、よりよい商品をより安く提供してきた。

 ところが、このチェーン店経営の常識を否定する動きが、コロナ下の外食産業で目立ち始めている。その代表が全国に354店舗(21年5月末)を持つ、中華チェーン大手の大阪王将だ。

大阪王将はチェーン店経営の常識とは異なる戦略で店舗運営を行っている
大阪王将はチェーン店経営の常識とは異なる戦略で店舗運営を行っている

 8月中旬、東京23区内にある2店舗を訪れた。世田谷区の小田急祖師ヶ谷大蔵駅前の店舗と荒川区のJR三河島駅前の店舗だ。ともに外観は変わらず、「街の中華屋」というイメージの店舗デザイン。内装も、黄色と赤を基調としたインテリアに、壁一面にメニューが張られているなど大きな違いはない。

看板同じ メニュー、価格は別

 しかしメニューを見比べると、ところどころ値段が異なる。人気メニューの1つである「餃子・炒飯定食」の場合、祖師谷大蔵店は税込み968円なのに対し、三河島店は同960円と8円安い。麺類も「炒め焼きそば」は前者が760円、後者は680円と80円もの開きがある。両店舗共にメニューは80種類前後だが、価格が同じもののほうがむしろ少ない印象だ。

祖師ヶ谷大蔵店のメニュー(上)と三河島店では、同じメニューでも値段が違う
祖師ヶ谷大蔵店のメニュー(上)と三河島店では、同じメニューでも値段が違う

 「今は、価格は乗降客数、周辺地域の平均時給、年齢層、競合店の価格設定など地域特性を調査した上で店舗ごとに決めている」。大阪王将で加盟店の営業支援などを担当する竹本光明取締役執行役員はこう話す。

 大阪王将はコロナ禍以前から、それぞれの地域特性に合わせ店舗を運営する「マイクロマネジメント」の導入を開始。外食大手は定期的にメニューを全国統一で改定する企業が多く、大阪王将でもかつては6カ月ごとにグランドメニューのリニューアルをしていたが、これについても廃止した。

 チェーン店でありながら、「画一化」というチェーン店経営の常識を見直し始めたのは、かつての「定石」の威力が色あせてきたからに他ならない。

 米国で生まれて日本に戦後導入され、中内功氏や伊藤雅俊氏など多くの著名経営者が実践してきたチェーンストア理論。その重要要素である画一化は、国土が均一に発展し、消費者の嗜好も似通っているような国ではより威力を発揮する。だが、都会と地方、あるいは都会の中でもエリアごとに住民の所得や消費傾向が異なるような場合では話は別だ。

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