日常生活に定着しつつある、行動経済学やナッジなどを使った「本能マーケティング」。ただし、その使い方を誤ると「毒薬」として逆効果を生みかねない。企業の失敗事例から、行動経済学との正しい向き合い方を考える。

■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)NTTドコモ、メッセージ配信で「そっと後押し」
(2)LCCピーチの「旅くじ」に大行列 あえて不便なものが売れるワケ
(3)タイガースファンも大爆笑 人が動きたくなるオモロイ“仕掛学”
(4)「モノ売らない店」に企業と消費者が押しかける理由
(5)後発ながらシェア奪取の勝ち筋、シミュレーションで学ぶ行動経済学
(6)気づけばステマで大炎上……行動経済学の「失敗」防ぐ5カ条(今回)
(7)大竹文雄・阪大教授「行動経済学は誰もが活用する時代に」

 「一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものでした」。5月3日、大幸薬品のホームページにはこうした文章が掲載された。同社の主力製品、空間除菌剤「クレベリン」の広告表示を巡る問題へのおわびだ。
「損失回避」に乗じて販売を増やした大幸薬品のクレベリンは、不当表示によって業績や企業価値を引き下げる結果になった(写真=共同通信)
「損失回避」に乗じて販売を増やした大幸薬品のクレベリンは、不当表示によって業績や企業価値を引き下げる結果になった(写真=共同通信)

 自社サイトやテレビCMなどでクレベリンが「空間や物に付いたウイルス・菌を99.9%除去する」とうたっていた大幸薬品に対し、消費者庁は4月中旬、60グラムと150グラムの置き型2商品が景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして再発防止命令を出した。広告表示に合理的根拠がなかったためだ。

 クレベリンの好調な売り上げなどを主因として、同社は2020年12月期に過去最高益を記録。新型コロナウイルス禍で除菌用品のニーズが急増した恩恵を受けてきたものの、今回優良誤認とされた広告宣伝は、コロナにかかりたくないといった消費者の「損失回避」に乗じた手法だったと言える。つまり、損したくないという気持ちが、得したいという気持ちよりも強く行動に表れやすいという心理を悪用したということになる。

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