行き先を選べない「旅くじ」に長蛇の列ができ、「焼けていないパン」が大ヒット。新型コロナウイルス禍になってから、なぜか不便な商品やサービスが人気を集めている。便利に慣れた消費者にとって、実は不便だからこそ得られる益が魅力的に映るからだ。

■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)NTTドコモ、メッセージ配信で「そっと後押し」
(2)LCCピーチの「旅くじ」に大行列 あえて不便なものが売れるワケ(今回)
(3)タイガースファンも大爆笑 人が動きたくなるオモロイ“仕掛学”
(4)後発ながらシェア奪取、シミュレーションで学ぶ行動経済学
(5)行動経済学が気づけばステマに…TikTokに失敗を学ぶ
(6)大竹文雄・阪大教授「行動経済学を誰もが活用する時代に」

 4月29日、午前11時。東京・渋谷の「渋谷PARCO」の開店と同時に、店内4階の特設会場に設置されたカプセル自動販売機の前に多くの若者が詰めかけた。彼ら彼女らのお目当ては、格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションがゴールデンウイーク限定で企画した「ペア旅くじ」。1回1万円でカプセルを引け、中には航空券の購入に使える1万2000円相当か2万円相当のポイントクーポンが入っている。ただし、行き先が1つだけ書かれており、それ以外の路線には使えない。

ゴールデンウイークに渋谷PARCOで販売された「ペア旅くじ」。早々に用意した330個が完売した(写真:古立康三)
ゴールデンウイークに渋谷PARCOで販売された「ペア旅くじ」。早々に用意した330個が完売した(写真:古立康三)

 このゴールデンウイークは特別なペア仕様となったが、もともとは1回5000円で、6000円分または1万円分のポイントが得られる「旅くじ」。2021年8月に大阪の心斎橋PARCOで細々と販売を始めたところ、SNS(交流サイト)上で話題に。10月に東京で販売すると行列ができ、用意した1800個がわずか3日間で完売してしまった。その後、ピーチが就航する名古屋、福岡、札幌のPARCOでも販売を始め、22年3月には回転ずし大手「スシロー」の店舗でも販売。これまで累計で2万3000個を販売する大ヒット企画となっている。

 21年12月には東武鉄道、22年1月にはプリンスホテルがホテルの宿泊券や食事券が当たる同様のくじを実施。参加希望者が殺到し、受け付け開始の時刻より前に整理券の配布が終了したり、ウェブで事前抽選を実施したりするほどの人気ぶりだった。ホテルがピーチの後追いをしたのは間違いなさそうだが、人気の理由は実は異なる。

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