日経BPコンサルティングが実施しているブランド価値調査「ブランド・ジャパン2023 」(BJ2023)の一般生活者編で順位が上昇した企業には、3年間の新型コロナウイルス禍を経たこの時期に、「外出しない・人が来ない」というコロナ禍の“常識”を覆してヒット商品を生み、評価につなげたところが目立つ。ニベア花王、星野リゾートは、どんな発想で危機をチャンスに変えたのか。
日経BPコンサルティングが毎年実施しているブランド価値調査「ブランド・ジャパン」(BJ)の一般生活者編は、企業ブランドと製品・サービスブランドの合計1000件を対象としている。その最新版となるBJ2023の結果がまとまり、3月24日に発表した(調査は昨年11月に実施)。
首位に輝いたのは、19位から躍進したユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)だった(詳しくは日経ビジネス2023年3月27日号の第2特集「ブランド・ジャパン2023調査 コロナ明け追い風にUSJ首位」を参照)。テーマパークに限らず、今回の調査では「お出かけ」に関連するブランドが軒並み上昇した結果となった。
ランキングをよく見ていくと、3年間のコロナ禍を経たこの時期にブランド価値を上げた企業の中には、コロナ禍の“常識”を覆してヒット商品を生み、高評価につなげたところが目立つ。どんな発想で危機をチャンスに変えたのか。
肌の悩みに応える「日焼け止め」
BJ2023一般生活者編の総合ランキングで前回の155位から124位に上がったのは、青い缶に入ったスキンケアクリームで広く知られる「ニベア」だ。化粧品・スキンケアのブランドでは資生堂(174位)、コーセー(463位)などより上位となる。ニベアが他のスキンケア・ブランドと異なる点は、コロナ禍においても毎年ランキングを上昇させてきたことだ。特に今回は総合ランキングを構成する因子のうち、「フレンドリー(親しみ)」と「コンビニエント(便利)」という項目が伸びている。
一般に、コロナ禍は化粧品・スキンケアのブランドにとっては逆風となる要素ばかりだ。在宅勤務が当たり前になり、人に会わない日は化粧をしない。外出するときもマスクを着けているから口紅どころかカラーリップの使用も激減。外のレジャーも減ったので日焼け止めを塗る機会もほとんどない――。
では、なぜこの時期にニベアの評価が高まったのか。
その答えとなりそうなヒット商品の一つが、21年2月にニベア花王(東京・中央)が投入したUV(紫外線)ケア製品「ニベアUV ディープ プロテクト&ケア ジェル」だ。逆風の中ながら、化粧品通販サイト「アットコスメ(@COSME)」の22年ベストコスメアイテム賞をはじめ、化粧品・スキンケア関連の賞を受けるほどの人気となった。

UVケア製品に逆風が吹く中、ヒット商品となった秘密は製品のコンセプトにありそうだ。それは、日やけによるシミ・ソバカスが予防できること、すなわち日常使いの美容ケア製品であることを前面に押し出したところだ。
発売当時の日焼け止め製品の商品棚には、SPF50といった紫外線防止効果の高さを数字でアピールする製品がいくつも並び、一般生活者にとってはどれを手に取るべきか、違いが分かりづらい状況だった。
一方で、花王が実施した調査によれば、30代以上の女性は紫外線によるシミの発生を日常の肌悩みの一番に挙げていた。そこでニベア花王は、紫外線による肌悩みを抱える人向けに「シミ予防」をストレートに訴求する戦略を採った。日常使いなので成分にも気を配った。肌に塗ったときに違和感を感じにくいよう、化粧水や乳液を塗っているときに近い感触を目指したという。
こうしたコンセプトと毎日でも使える使用感の良さが支持されて、コロナ禍であっても多くの人が手に取るようになった。ディーププロテクト&ケア ジェルは、他社製品を含む全日焼け止め商品の中で、22年上期(1~6月)の売り上げランキング3位(金額ベース)に入った。
ニベアは従来、肌がかさついたときに使う秋・冬の商品というイメージが強かったが、「(今回の製品のヒットで)ニベアには春・夏も使える商品があると広く知っていただけたのではないか」と、ニベア花王ビジネスユニット1の雨宮綾子部長は話す。コロナ禍という逆風の中でも、消費者と日々の接点を増やせば、ブランドの認知は高められる。ニベアのスマッシュヒットはこのことを示しているといえそうだ。
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