「国民の2人に1人が苦しむ」とのデータもある花粉症。今年は2022年よりも飛び始めが早く、既に10倍以上飛散しているというが、なおも猛威を振るう。現在、花粉の飛散を自動観測しているのは官民合わせて民間気象会社のウェザーニューズのみ。日本列島を“国民病”から救う――。その鍵を握るのは、各地に築き上げた独自の観測網とその活用法だ。

 片手に載るほどの大きさで、目や鼻、そして口も付いた白い球体。この正体は、ウェザーニューズが開発した花粉自動観測機だ。名を「ポールンロボ」という。

 内部に取り付けたファンを使って「口」から空気を吸い込み、レーザー光を照射。空気中に含まれる粒子の大きさや表面の形を捉えることで「花粉かどうか」を判別する。

 1日で観測した花粉の量に応じてポールンロボの“目”の色が5段階で変わる。例えば、1日当たりの飛散数が0~29個なら白、30~99個は青。300個以上になると紫、といった具合だ。花粉のシーズンには全国の家庭や病院など約1000カ所に設置し、24時間稼働している。

人の顔に見立てた花粉観測機「ポールンロボ」
人の顔に見立てた花粉観測機「ポールンロボ」

 花粉の観測方法としては、スライドガラスを屋外に24時間置いた後、顕微鏡で花粉を数える「ダーラム法」と呼ぶものがある。スギやヒノキなど、花粉の種類を見分けられるが、1日単位のデータしか得られない上に労力や時間を要する。ポールンのような自動観測は花粉の種類こそ判別できないものの、リアルタイムでデータを収集できる。

 ウェザーニューズによると、現在、日本国内で花粉の自動観測を手掛けているのは同社のみ。NTTドコモは経営資源を集中させるため、2019年3月末で花粉の飛散量などを測定する事業を終了。環境省も21年12月に花粉観測システム(通称:はなこさん)による観測を終えた。民間気象事業者が同省よりも多くの地点で花粉観測・情報提供を行い、地方公共団体も独自で情報提供をするようになったためだという。

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